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2009年05月31日 11:00

VOL 21

1 スローフード巷談(1)

●スローフードな田園都市・新潟市

 新潟市が日本海側初の政令指定都市になって3年目となる。折りしも天地人ブームが沸き起こり、その余波は新潟市まで及んでいると聞く。
 政令指定都市になったということは、国からある程度の権限や予算をもらえたということになる。いわは新潟市民が行える決定も増えたことになる。人口約81万人(新潟県全体では243万人、約30%)、農地面積35,000ヘクタール、食料自給率64%の広大な農地と都市機能をもつ新都市が新潟である。
 目指すところは「花と食の政令市・新潟」である。いわば「田園型政令指定都市」構想のもとに様々な模索が始まっている。
市の方向は以下の3点を柱にしている。

  1. 日本海交流都市
  2. 田園型拠点都市
  3. 分権型協働都市

 具体的な戦略プランは、新潟政令市「09-10戦略プラン」として、まとめられている。ホームページでも公開されている。それらをざっと俯瞰すると以下のトライアングルマップを独自に描くことができる。

 以上の図を、新潟の持つ強み(農、自然、交通の高次インフラ、農畜魚産物、地酒など)を機軸に俯瞰すると、様々な田園都市構想のコンテンツが見えてくる。新潟ならではの新しいインフラづくりやコミュニティ社会づくり、モノ作りが見えてくる。
 さらに次の戦略的な時代の潮流(3点ある)を加味すると、新潟の未来像がきっきりと浮かび上がる。
その3点とは

  1. 高齢社会の経済システムの見直しが始まる
  2. 農業中心の生活革命が都市を動かす
  3. 歴史回帰、自然回帰、仲間や絆の回帰が地域を蘇らせる

 高齢者、農業生活革命、3つの回帰現象が深く関わって、都市や町のコミュニティを新しく作り上げてゆく。しかもその速度はきわめてスローモードとなる。決して3年や5年の行政区間で成し遂げられるものではない。そのスタートが2007年の4月1日となる。
 その中心の推進エンジンとなるのは、定年を迎える団塊の世代を中心に、グリーンライフをめざす一部の若者や農家である。今まで日の目を見られなかった零細農家や朝市のおばあちゃん達である。この点をしっかりと見ておかないと、かって田園都市として名を馳せた田園調布の二の舞を踏むことになる。単なるデベロッパーの思惑にはまることになるから要注意だ。

 新潟市ではすでに「食と花の都」を目指して、そのアクションプランをマニフェスト化している。「新潟の明日を開く40の扉」として整理され、取り組みも始まっている。大農業都市の新潟の姿をどのように描いていくかに、スローフードとしては大きな関心があり、注視している。
 また新潟の新しいキャッチフレーズにも多大な関心がある。「食と花の都市」でもいいが、たとえば次のフレーズはどうだろうか。

    • グリーンな生活都市 新潟市
    • 食べられる景観の街 新潟市
    • 生涯住みたい街 新潟市
    • 水と芸術の大地 新潟市?
    • 住み飽きない街 新潟市
    • かぶき者の街 新潟市
    • なつかしき未来都市 新潟市

しかしどうもピーンとこない。やはり「なつかしき未来の街 新潟」に収斂する(笑)。
 さて「スローフード・にいがた」ならばどのような「田園都市」新潟市を目指すかについて、アイデアを整理し提案しておこう。広く新潟県全体に関わる「田園都市開発のマーケティング」ともなるが、あえて新潟市に当てはめることにしたい。
 前述のトライアングルマップにも記載されているが、田園都市構想のKFS(成功の鍵)は3点ある。

(その1)、基幹作物の高付加価値化をどう進めていくか(地域ブランド化)
        →量の自給率と質の自給率の日本一を目指す
        →「農」で食えるマーケティングに目覚める
        →農畜産物の6次産業化を図り、各地域全体をブランド化する
        →小規模農家を守り、産物の多様化を図る
        →系列化流通と産直流通(朝市など)の棲み分けを明確にする
  (その2)、市民と農家との相互交流のインフラをどう構築していくか
        →農業体験できる「食育の里」をつくる
        →家族菜園、市民農園などロシア風のダーチャを勧める
        →農家との契約栽培
        →新規就農支援、週末農業相談所の開催
  (その3)、食の地方分権化をどう進めていくか
        →「うまいモノを、うまい所で、つくって食べよう」運動を徹底する
        →1番旨いものは、まず新潟で楽しむ運動を展開する。
           「ニイガタ・ファスト」ブランド制度をつくる
        →県外には2番手しか出荷しない、または県外持ち出し禁止策を取る
        →新潟市名物の「食の大博覧会」の開催。食べたい人は新潟へ

など、様々なコンセプトアイデアが湧き出てくる。
 いわば「ただ、田んぼがいっぱいあるだけの新潟市」「巨大食料供給基地の新潟市」だけを戦略の起点にするだけでは、合併を機会に地域ブランドによる新潟市の活性化が急務なのである。新しい新潟市そのものをブランド化する戦略が必要なのである。そのための課題が上記の3点である。
 しかし以上のアイデアを具現化するのは、行政指導では限界がある。各種の委員会によるビジョンの作成は、大変貴重であるが、それを具現化しなければ意味がない。その受け皿となるのが民間の企業や農業、商業団体、一部のNPOである。
 市農工商が一つのビジョン達成のために、有機的に連動する仕組み(これはまだ実存しない)つくりが、実は最大の課題となる。
 この仕組みつくりを専門に担う、マーケティングに長けた人材を有する民間会社を設立するもの、ひとつのやり方である。これらの運営を委託できるシンクタンクを入札で公募するのもいいだろう。こうでもしないと、まず市農工商の連携組織は動かない。

 今、筆者の前に、新潟市の地図が開かれている。それを眺めながら以下のような妄想にふけっている。
   1、「巻」辺りに「お酒のバッカス村」をつくろう
   2、白根辺りには、中村観光果樹園を中心にした「果樹園共和国」(6次産業果樹園)
   3、亀田郷には地産米の「おせんべい学校」
   4、沼垂は醗酵の町として、「醗酵歴史館」
   5、豊栄、亀田、辺りに、週末市民農園や田んぼのレストラン
   6、5大ホテル協賛「スローフード世界大会」の開催
   7、新潟市から出る生塵を、堆肥として循環できるプラントビジネス
 スローフード運動を新潟に興してすでに7年目になる。資金不足と戦いながらスローなビジネスやネットワークづくりに邁進してきた。しかしそろそろ次のステップへと運動の機能と成果を上げてゆかねばならない。そのようなことを考えていると、窓の外はもう新緑の輝きに満ちた午後である。


2 食あれば句あり

<2-1>トマト族の反乱

         *
○血圧を恐れ日毎のトマト汁       津田政彦
○団欒やトマトの紅のある夕餉      佐々木良作
○沈みたるトマトを探る井戸の底     食いしん坊
         *

 日本人が食べる野菜のベスト5は、大根、じゃがいも、キャベツ、玉葱、そしてトマトの順になる。このトマトは世界では8000種、日本でも登録されているだけで120種にもなる。江戸時代に長崎に伝えられた。
 またトマトという呼び名は「膨らむ果実」を意味する「トマトゥル」からきている。はるか昔、メキシコ湾をのぞむベラクルス地方のアステカ人がこう呼んだのが始まりだ。トマトゥルとは元来「ホオズキ」を指し、メキシコではホオズキを煮込んで料理に使っていたところから、形がよく似たトマトも同じ名前で呼ばれた。
 この「トマト」という呼び名、世界共通だと思っている人も多いが、実は、イタリアでは「ポモドーロ(黄金のリンゴ)」、フランスでは「ポム・ダムール(愛のリンゴ)」、イギリスでは「ラブ・アップル(愛のリンゴ)」と、さまざまである。
 なぜリンゴ?と思われるかもしれないが、昔からヨーロッパでは値打ちの高い果物や野菜を「リンゴ」と呼ぶ習慣があったからだという。16世紀にトマトがヨーロッパに伝わって以来、現在までに世界各地でさまざまな品種がつくられた。熟してもしっかりした果実で、果肉がくずれにくい品種として開発された。

 トマトの品種には赤色系、桃色系などがある。皮が黄色く厚くて丈夫なのが赤色系、薄くて無色透明なのが桃色系。ホームセンターなどでトマトの苗を物色すると、それらが様々な表情をして売られている。
 栄養的にも実り豊かな野菜として広く料理に用いられ、世界でもっとも愛されている野菜といえるだろう。ひと皮むけば果肉の色は同じである。赤色系は世界のほとんどの国でたべられているが、日本ではジュースやケチャップなどの加工用に栽培されている。
 日本に初めて紹介されたトマトが、酸味と香りの強い赤色系のものであったためか、あまり好まれなかった。その後に入ってきたのが桃色系。トマト臭が弱く甘みもあったので、広く受け入れられ、今では桃色系が圧倒的に多い。
最近は熟してもしっかり実が締まり、流通段階でもくずれない完熟型トマトとして開発された”桃太郎”が大ヒットしている。また、完熟ミニトマトも人気が出て、トマトは果物のようにデザート感覚で食べられるようになった。
 新潟でも豊栄地区を中心にトマト栽培が盛んである。品種は概ね桃太郎だ。F1の一代雑種だが、完熟しても身持ちがよく、美味しいままの状態で販売されるから、今や売り場を占拠している。食べると確かに甘さと酸味がうまくバランスしている。どのような食べ方をしても、そこそこイケる優れものトマトである。
この桃太郎を題材にして、ある小学校の食育講座を行った。ハウス栽培と露地栽培の桃太郎の2種を比較する実験である。

 まず「トマトは水に浮かぶか、沈むか」という実験を、子ども達の目の前で行うことにした。トマトが水に浮かぶと思う人は手を挙げてと言うと、約80%の子ども等が賛成する。ボクらの世代は、トマトは水に沈むものだと固く信じているが、最近のトマトはどうやら水に浮いてしまうらしい。
 子ども達の視線が注がれる中、おもむろに2種の桃太郎を水に入れみる。すると同じ桃太郎でも、浮くものと沈むものに分かれる。ハウス栽培トマトは浮きやすく、露地栽培トマトは沈むということがわかる瞬間だ。
 また2種の食べ比べをすると圧倒的に、露地栽培トマトに軍杯をあげる子どもが多い。この実験を通して、トマトに関する様々な学びをすることができる。
 露地栽培トマトが水に沈むのは比重が水より重いからだ。おそらく自然環境から吸収したミネラルや糖分が豊富だからであろう。美味いのもそのためである。当然であろう。このトマト講座は大人たちへのセミナーでも概ね好評であり、人気の高い食育教本となっている。
 しかし最近のトマトは水に浮くのが圧倒的に多く売られている。しかもそれが本物のトマトだと認識している。嘆かわしいことと言える。
 その嘆きに相応して、「本物のトマトは水に沈む」という強力な支援部隊が現われた。エコファーマーと言われる特別栽培農法チームの人々である。堆肥栽培に目覚めた人達が、ミネラルが豊富な糖度の高いトマトの栽培に力を入れ始めたのだ。
 合言葉は「自分の家族に食わせる、水に沈むトマト」である。しかもその水に沈むトマトを食べたら、もう今のトマトには戻れないほどの美味さと食感だと言う。

トマト盗るお天道様に背をむけて

 こうなると化学肥料や農薬に頼った大量栽培のトマトは、あっという間に市場からそっぽを向かれるだろう。これを「平成のトマト族の乱」と言えばいいだろう。
 これはトマト族だけでなく、スイカ族、キュウリ族、瓜族なども大いに反省して、反乱を起こさねばならない時期の到来を意味する。農薬や化学肥料の大量散布で死んだ土を、もう一度力のある土に戻そうという動きが、トマト族の乱には秘められている。

 そう言えば、戦後の路地トマトのあの芳醇で甘い味は、一体何処に行ってしまったのだろうか。誰でもがそう思いつつ、長い時間を費やしてきた。婆さまが路傍の石に腰掛けて、大きな口を開けて美味そうに食べていたあの路地トマトは、今やどこを探しても見当たらない。トマトと婆さまの風景は、実に、ピタッと様に成っていた。
 また川遊びには必ずと言っていいほど、トマトやウリ、スイカを子ども達は持参して、石で囲った川縁で冷やしながら、おやつにしていた。泳ぎ疲れた身体には最高のご馳走だった。しかも実に美味かった。
また当時は、子どものトマト泥棒やウリ、柿泥棒などを大人たちは大目に見ていたように思う。将来を背負う子供たちが、腹をこしらえているんだと言う、天下国家の認識があったからだ。トマト泥棒ぐらいで、彼らの将来に傷をつけてはいかん、という大人の共通の思慮遠慮があったのだろうと思う。
 こんな切ない歌もある。

トマト泥棒捕らえてみれば好きな人

 しかし最近、子供がトマト泥棒で捕まったという記事を見たことがない。柿泥棒でも聞いたことがない。それは、泥棒してまで食べたいトマトが畑にないのが原因なのかも知れない。
 栄養が豊富で、癌の予防にもなる機能性があり、それでいて冷えたビールと一緒にやるとバカウマのトマトである。トマトには真っ赤なスローな時間が詰まっている。


<2-2>家族する「新じゃが」

                 *
○新じゃがをほかほかと食ひ今日を謝す   大野林火
○新薯に夕餉すすみしうれしさよ       中尾白雨
○新じゃがや戦後貧しき大家族        食いしん坊
                 *

 晩夏になると「新じゃが」がそろそろ出回り始める。札幌の大通り公園で食べるあのジャガバタは、北国に生まれてよかったと思わしめる至福感がある。
 本土(今でも道内の人はこう言う)から来た人々も、何はともあれ大通り公園に駆けつけて、口をアフアフさせながら、熱々のジャガバタにかぶりつく。この儀式をしないと北海道に来た気がしないのだ。
 そのじゃが芋は馬鈴薯、オランダ芋、甲州薯とも呼ばれ、南米が原産地。日本では男爵芋が代表品種で、他にメイクイーン、北あかり、インカのめざめ等が市場に出回っている。
 茹でて良し、焼いて良し、煮て良し、揚げてよしと、すべての料理に欠かせない貴重な野菜がジャガイモである。

 さらにじゃが芋は芋業界の中でも、表舞台に登場するにふさわしいスターとして一目置かれている。この芋業界の評議会は、サツマイモ、里芋、自然薯、山芋、太郎芋、こんにゃく芋界の代表や名士で構成され、我が国の食料安保を陰から支えている。国の極秘の機関だと言ううわさもある。その時は頼むぞと、声をかけたくなる頼もしい存在なのである。
 ところでじゃが芋が何故、他の芋業界より表舞台にふさわしいのだろうか。もうお分かりだと思うが、それはじゃが芋が持つ明るさ、清潔さ、淡白さ、モダンさにある。フランスのシャンデリーゼ通りに、ジャガバタ売りが立っても様になるのだ。暗さがまったくない。

新ジャガのバターとろける凱旋門

サツマイモや里芋だったらこうはいかない。
 しかも「いかようにも、あなた様のお好み通りに変えてください」という、真摯な純情さが、じゃが芋にはある気がする。ジャガバタしかり、ポテトチップスしかり、焼ジャガしかりである。いずれも屋外で歩きながら食べるのに少しも違和感がないのが、じゃが芋の明るさと育ちの良さなのだ。サツマイモが陰の愛人ならば、じゃが芋は公認の恋人って感じと言ってもいいだろう。
 さらに、とかく女性に偏りがちなファンを、男性にも拡大しているのがエライのだ。この男性は「芋野郎」と呼ばれ、その数およそ1000万人(推定)はいるだろう。
 ところでジャガイモの花をみたことがあるだろうか。北の大地北海道を汽車で旅すると、地平線の朝日に、ほのかに一面に咲き誇る薄紫の花に出会うことができる。派手な花ではないが、心に沁みる朝日の大地の一花と言えるだろう。まさに大地の夜明けの色をなしている。

 さてこのジャガイモを料理を問答してみよう。それもいきなり「男もすなり、じゃが芋メニュー」コンテストを、開催することにしよう。老いも若きも、我こそは「じゃが芋一級士」の面々達が挑戦するのだ。
 コンテスト風景は省略して、その入選作は以下の通りである。
   第1位、イカの塩辛サンドじゃが芋(バカウマで特許申請中)
   第2位、塩雲丹サンドじゃが芋(まぶして焼いてもイケます)
   第3位、ワサビ醤油漬けこんがり焼き
   第4位、梅味噌からめ焼き(日本酒にサイコー)
   第5位、塩胡椒牛タンサンド(ビ―ルがグイグイ)
   第6位、キムチサンドじゃが芋
   第7位、じゃが芋のしゃぶしゃぶ
   第8位、じゃが芋の糠の一夜漬け
   第9位、ラップをかけて、一〇分チーンすれが、丸ごとホカホカ

 などいずれも「珍味系・油塩類・後引き族」メニューを、じゃが芋一級士達は狙っていることに気がつく。これはポテトチップ開発の常道とも言えるだろう。
 低カロリーでビタミンCが多く、誰にでも好かれるじゃが芋。そう言えば、茹でたての新じゃがを囲んだ家族の昼餉を、懐かしむ人が多いはずだ。

新じゃがの熱きがうれし剥かず食ふ

熱いから皮も剥かずに、そのまま塩の吹いたじゃが芋にかぶりつきます。
 そして「熱いから慌てて食べるではないぞ!」と、たしなめられた経験と口に残った美味しさの残像は、今も家族団らんの原点として、心の隅にへばりついて残っている。貧しい時代の昼餉だったが、決して貧ではなかった。ホクホクの新じゃがには、家族団らんの匂いと味と明日への希望があった。


<ジャガイモひとくちメモ>

○男爵薯(だんしゃくいも)
 生食用品種。明治時代に川田龍吉(かわだ・りょうきち)男爵がイギリスから持ち込んで日本に定着させた品種という説の他に、アメリカからとする説もある。
 デンプンが多くホクホクした食感が得られるが、煮くずれしやすい。このため、粉吹き芋やマッシュドポテト、コロッケなど潰してから使う料理に適している。芽の部分が大きく窪んでおり、でこぼこした形状なので皮をむきにくい。主に、東日本で主流の品種である。花は白い。

○メークイン
 生食用品種。大正時代にイギリスから日本に持ち込まれた品種。男爵イモよりもねっとりしていて、煮くずれしにくい。このため、カレーやシチューや肉じゃがなど、煮て調理する料理に適している。
 男爵薯に比べて長い形状で、でこぼこもそれほどひどくなく、皮はむきやすい。主に西日本での消費が多い。世界的に見ても、特に日本で人気がある種。「メイクイーン」と呼ばれることも多いが、品種名としてはメークインが正しい名前である。花は紫色である。

○キタアカリ
 最近の一番人気品種である。生食用品種。男爵薯を母親として、線虫抵抗性を持たせるよう農林水産省北海道農業試験場(現:北海道農業研究センター)で品種改良したもの。
 カロテンやビタミンCの含有量が多い。男爵薯同様、粉吹き芋やマッシュドポテトに適している。黄色が強めである。

○インカのめざめ
 2002年に種苗登録された、小粒で黄色みの強い品種。アンデス産の品種を日本向けに改良したもの。甘みが強く、サツマイモや栗に似た味を持つなど食味はよいが、収量は少なく、他の品種と比較して栽培が難しい。
 また発芽しやすく、長期の保存には不向きである。生食用として人気が高まってきているが、生産量は少なくジャガイモのなかでは高価である。


<2-3>恍惚の「さくらんぼ」

         *
○舌に載せてさくらんぼうを愛しけり     日野草城
○桜桃のこの美しきもの梅雨の夜に     森 澄雄
○湯上りの妻が持ちくるサクランボ      食いしん坊
         *

 サクランボの季節がくると果物屋の店頭が気になるものだ。高くて庶民には手が出ないものだが、うらめしそうに眺めるだけならお金は要らない。しかもサクランボには楽しき頃の青春が重なってくるから、余計に気になる。
 サクランボは桜桃の字のごとく、バラ科の桜の花が実を結んだもの。「甘果桜桃」が正しき名前で、一般にはナポレオンと呼ばれている。産地はとくに山形県が有名で、シーズンにもなるとサクランボ市があちらこちらに起つ。6月の第3日曜日(サクランボの日)は、かの太宰治の桜桃忌にあたる。「人間失格」「斜陽のさくらんぼ?」等の名作を思い浮かべる。
 さてボクらがサクランボに出会うには、まず山形駅前の露天売りを探索するに限る。佐藤錦という品種が軒を並べて売られている。そこで頬被りしたおばちゃんや鉢巻姿のおっちゃんと、しゃがみ込んで交渉するのがいいだろう。サクランボは鮮度の落ちが早いので、その辺を見極めて試食や値切り交渉をするのがコツである。

 値段は結構張り、一粒100円前後だ。初夏のルビーと言われるほどに、その張りつめた皮肌は輝きに満ちて、愛くるしく、清純、そして無垢の気品すら兼ね備えている。まさに犯さざるべき禁断の木の実の貫禄である。
 しかしこの100円は、決して高くはない。一粒のサクランボを手に取り、じっと20秒ほど見つめると、値切ってはいけない厳かな気持ちになり、そう思うようになるから不思議だ。そして可愛い箱に30粒入れて、宅配便込みの3800円で交渉成立する。交渉成立するとやっとおまけで、3粒ほど試食をさせてくれる。

遠き日の楽しき頃やサクランボ

 食べ方にも通の間では暗黙のルールがある。まず薄緑色の柄の先端を指先で持ち、必ず目の前でぷらぷらと揺らすこと。この揺らしている間に、それを迎え入れる唇の態勢を万全な状態にしなければなりません。
 焦ってもいけないし、怠惰でもいけません。なにせ1粒100円の鮮紅色のルビーである。粗相があってはならない。まずは唇に軽くはさんで、このひんやりとした輝きの皮肌感を確かめる。
その後、果肉を口に含む。そうしておいて、指先で柄を引っ張る。
 するとプツッと柄が抜けて、果肉は舌の上で暫くは弄ぶのがルールだ。次は歯で2、3度プチッと噛み切り種だけを外に出し、あとは安心して大きく、ゆっくり、気品よく味わうのが基本形である。恍惚感に浸りながら味わうのが通の食べ方とも言える。
ところでサクランボの味について、こういうものだと表現できるような決め手がない。

サクランボを美味いと言う者前に出よ

 ほのかな甘味と、ほのかな酸味が切なく口中に広がるだけである。1粒食べ終わっても、ガッンとした納得感がない。だから叉一粒と、ついつい手が出る。つまり連食性がある。これってキャンディーのヒットを作る秘訣なのでは、と脳裏を過ぎる。そういえば「サクランボの詩」という、ヒットキャンディがあった。
 そして気が付くと、足元の周りは種だらけの、貪欲な、礼儀も知らない我らを発見することになる。ならばと、サクランボをより楽しく、実感的に食べようと言う事を考えることにする。サクランボの種飛ばし競争という手があるからだ。
 ルールは簡単だ。サクランボの種を口から吐き出して、その飛んだ距離を競うだけの競技である。3粒の中で一番遠くに飛んだ距離を記録とするのである。
 昨年のチャンピオンA君の、連続動作をここに再現しよう。
 スタートラインに位置したA君は

1、先ず水を一口飲み、競技の無事を祈ります。
2、次に規定のサクランボを口に含み、柄をプチッと引き抜き、果肉を噛み砕いて飲み干します。
3、そして歯茎の間に温存しておいた種を舌の上に引き出します。
4、空気の抵抗を最小限にするために、種の果肉を丹念に削ぎ落とし、種を舌先で巻き込んで、出来るだけ助走路を長くするために、口の奥の方まで持ち込みます。
5、そのあと身体を斜めにし、首から上半身を後ろにそらしながら、息を大きく吸い込んで止め、反動をつけて一挙に舌先の種を、約45度の角度で発射します。
6、その記録は18メートル(推定)。

 あいにく追い風のために参考記録となったが、「サクランボ空を飛ぶ」の噂は、瞬く間に全国に広がることとなる。中には入れ歯を飛ばした参加者も登場する。
 病気見舞い品の御三家(メロン、桜桃、マスカット)の、サクランボの季節がやってくる。最近はサクランボ泥棒が横行して、村では自警団を配置して、警戒しているようだ。1粒100円の宝石だから、ピンクパンサーも狙うはずだ。

まず父が種を飛ばせりサクランボ


3 スローでウオッチング(21)

  1. 新潟と酒田を結ぶ「きらきらうえつ号」に乗った。土日に運転される全席指定の快速電車である。4両編成で一両は観覧車となっている。
    乗り込む前は、記念写真を撮る親子連れがプラットホームでポーズをとる。鉄道ファンもカメラのシャッターを押す。
    満席の状態で発車するとまもなくガイドさんが、バスガイドなみに観光案内をしてくれる。宿の予約も承る。今までの特急電車とはまったく機能が違うから驚きだ。子ども達は窓際の観覧椅子に腰掛けて実に楽しそうである。一度、乗車してみるのもスローな旅の一路となるだろう。

  2. 環境庁のまとめによると、食品廃棄物が年間1900万トンになるという。
      ○外食、小売、卸、食品メーカーから1130万トン
      ○家庭からでる生ゴミが770万トン
    この1900万トンはまだ食べられるというから、この数字は衝撃的である。
    かくも膨大な食品廃棄の原因のひとつが「賞味期限」。おいしく食べられる目安のことで、偽装事件以後、ますます世間の目がうるさくなり、廃棄に拍車がかかっている。
    コンビ二も生ゴミに悲鳴をあげている。飼料にリサイクルしたり、格安定食として再利用するなどの試みをしているが、大方は生ゴミとして廃棄するしかない。
    ならば我らスローフードは料理の「持ち帰り運動」を会のルールと定めようと思う。嫌な顔をする飲食店と交渉するキーは「もったいない」である。

  3. 久しぶりにジャン卓を囲んだ。数十年ぶりの麻雀である。学生時代以来の人もいる。    そして役の数え方、点数の数え方、対戦相手の作戦や心理を読む戦いなど、このところ呆け気味だった闘争心がいやおうなしに静かに燃え上がる。
    見かけによらず慎重なAさん、ダマテンを狙うBさん、満貫を振り込んでしょぼんとするCさんなどと、手と頭をフル動員させながら決戦がすすむ。
    こうなると金持ちも役職も関係なくなる。配牌を読みきったものだけが勝ち組になる。まさに頭脳戦の下克上の戦いであり、そこが闘争心に火をつける。
    しかもこの麻雀は中国生まれである。中国人は凄い遊びを考えたものだ。役のつくり方は数十万通りあるとされ、いわば配牌毎に戦いの局面が違うのである。
    結果は普段はやや呆け気味だったDさんの一人勝ちである。うれしそうなDさんの笑顔が印象的であった。
    最近はこの麻雀がひそかなブームだという。とくに高齢者の間で盛んになっている。精神活動に対して最強でかつ娯楽性の高い麻雀ならば、納得がいく。麻雀のスローな森羅万象の時空世界を、これから仲間と楽しんで行きたいものだ。

  4. 念願の畑仕事に挑戦することになった。何で今更、しんどい百姓などと思っていたが、意を決して借りた畑に鍬を入れた。40坪ほどの畑である。しかしやり始めると、もうどうにも止まらないほど面白い。
    栽培するのは新潟の伝統野菜(6種)、トマト(3種)、茄子(2種)、西瓜(4種)、瓜、ジャガイモ(3種)、レタス、水菜、ともろこし、パプリカ、枝豆、小松菜、人参などである。野菜の栽培法という本を頼りに、見よう見まねで朝早くから悪戦苦闘している。
    苗で植えたトマトと黒十全(茄子)は、早々と枯らして失敗し、追加の苗を補給した。風と低温にやられたらしい。だから2回目は防寒と風除けに気をつけている。今のところ順調に育っている。
    寄居カブや小松菜は種の直播きに挑戦。ある日にポッと芽が出てきた。それを見つけたとたん、思わず声をあげた。これは感動ものだ。こんな面白い遊びが他にあろうか、と自画自賛する始末。百姓仕事なんて、と敬遠していたことが嘘のように、ひとりで畑のなかで小躍りしている。
    また隣の畑のおばあちゃんに声をかけて、いろいろ教えてもらっている。トンネルのつくり方、苗の植え方、肥料のやり方、剪定のやり方など細々と教えてもらう。そんな現場の先生は、すでに4人ほどになった。皆さん、嫌な顔もしないで親切に教えてくれる。 「野菜作りは野菜に聞け」というおじいちゃんの教えも、素直に耳に入ってくるから不思議だ。
    一汗かいた後は、畑で缶ビールを1本頂くのが楽しみである。多くのビジネスマンが、あくせく働いている時間帯に呑むビールは最高だ。なんか悪い気がする。
    最近はこの野菜を狙った子ども家族が、しきりに出来具合を電話してくる。もちろん食べきれないほどの収穫がある予定だから、無農薬野菜を送ってやるつもりでいる。まさか都会の子ども家族に野菜を仕送りするとは。人生は分からないものだ。
    またスローフードなどと片意地張っても、所詮大地の1粒の豆の芽には如かずなり。そんな気がする農(脳)生活の毎日である。

  5. 直江津のミニスーパーが人気を集めている。商店街の空き地や駐車場に、週1回テントをはって開催している。鮮魚、米、果物、野菜、花、豆腐、納豆など約200品目がならぶ。近くのお年寄りが開店の時間に合わせてやってくる。
    又まとめ買いの商品は、無料で午後4時までに自宅に配達し、喜ばれている。近くの八百屋さんや魚屋さんがシャッターを下ろした町に、再び活気が出ている。同じような過疎の地区からも出店要請が多くきている。近い、安い、新鮮、会話あり、無料宅配という空き地コミュニティーは遠のいた客足を再び取り戻す。