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2008年11月01日 12:02

VOL 18

1スロー談義を楽しむ(連載5)

4-9、スローな音を楽しむ

 近頃、物売りの声が路地裏から聞こえなくなった。豆腐売り、シジミ売り、納豆売り、金魚売りなどだ。竿竹売りと灯油売りくらいが残っているだけである。夏のアイスキャンディ売りなどは、子供たちが待ち構えていた声だった。「おっ・・おっちゃん、早く、早く、この丼に、いちごミルク氷を・・・」などと、小銭を握った子供の真顔が今でも我らの心を過ぎる。
 ではその季節の折々を彩った生活の音は、一体どこに消えたのだろうか。スローな風習やビジネスが、せこせことしたファストなモノに置き換わるのは、仕方ないとしても、次世代に残しておかねばならない日本の音って、やっぱりあるはずだ。
 単なるノスタルジーとか懐古趣味といった次元ではなく、スローフードにはスローな音が不可欠だからだ。新幹線の轟音と同時にSLの鈍な汽笛や音もまた、人類の宝物として大切なのである。その消え去ったスローな音をたずねて、旅を楽しむ人々が増えているとも聞く。風雅のきわみであろうと思う。
 まず環境庁が定めた「日本の音・100選」を挙げておこう。

NO

音風景

所在地

オホーツクの海の流氷

オホーツク海沿岸

時計台の鐘

札幌

函館ハリストス正協会の鐘

函館

大雪山旭岳の山の生き物

北海道東川町

鶴居の丹頂サンクチュアリ

北海道鶴居町 

八戸港・蕉島のウミネコ

八戸市

奥入瀬の渓流

十和田湖町

小川原湖畔の野鳥

三沢市

ねぶた祭り

青森市、弘前市

10

碁石海岸・雷岩

大船渡市

11

水沢駅の南部風鈴

水沢市

12

チャグチャグ馬っこの鈴の音

岩手県・滝沢村

13

宮城野の鈴虫

仙台市

14

広瀬川の河鹿と野鳥

仙台市

15

北上川河口の葭原

北上町

16

伊豆沼・内沼の真雁

宮城県・若柳町他

17

風の松原

熊代市

18

山寺の蝉

山形市

19

松の勧進のほら貝

鶴岡市

20

最上川河口の白鳥

酒田市

21

福島市小鳥の森

福島市

22

大内宿の自然用水

福島県下郷町

23

からむし織の機の音

福島県昭和村

24

五浦海岸の波音

北茨城市

25

太平山アジサイの雨蛙

栃木市

26

水琴亭の水琴窟

群馬県吉井町

27

川越の時の鐘

川越町

28

荒川・押切の虫の声

埼玉県・港南町

29

樋橋の落水

佐原市

30

麻綿原の昼春蝉

千葉県大多喜町

31

柴又界隈と矢切りの渡し

葛飾区

32

上野のお山の時の鐘

東京

33

三宝寺池の鳥と水と木々の音

東京

34

成蹊学園の欅並木

武蔵野市

35

新年を迎える船の汽笛

横浜港

36

川崎大師の参道

川崎市

37

道保川公園のせせらぎと野鳥の声

相模原市

38   福島潟のヒシクイ   新潟・豊栄市
39   尾山の昼春蝉   新潟県能生町

40

称名瀧

富山県館山町

41

井波の木彫りの音

富山県井波町

42

エンナカの水音とおわら風の盆

富山県八尾町

43

本多の森の蝉時雨

金沢市

44

寺町寺院群の鐘

金沢市

45

蓑脇の時水

福井県武生市

46

富士山麓・西湖畔の野鳥の森

山梨県・足和田村

47

善光寺の鐘

長野市

48

塩嶺の小鳥のさえずり

岡谷市・塩尻市

49

八島湿原の蛙の声

長野県・諏訪市

50

卯建の町の水琴窟

岐阜県・美濃市

51

吉田川の川遊び

岐阜県八幡町

52

長良川の鵜飼い

岐阜市

53

遠州灘の海鳴り・波小僧

遠州灘

54

大井鉄道のSL

静岡県本川根町

55

東山植物園の野鳥

名古屋市

56

伊良湖岬の恋路か浜の潮騒

愛知県渥美町

57

伊勢志摩の海女の磯笛

鳥羽市

58

三井の晩鐘

大津市

59

彦根城の時報鐘と虫の音

彦根市

60

京の竹林

京都市

61

るり渓

京都・薗部町

62

琴引き浜の鳴き砂

大阪府網野町

63

淀川河川敷のマツムシ

大阪市

64

常光寺境内の河内音頭

八尾市

65

垂水漁港のイカナゴ漁

神戸市

66

灘の喧嘩祭りのだんじり太鼓

姫路市

67

春日野の鹿と寺の鐘

奈良市

68

不動山の巨石で聞こえる紀ノ川

橋本市

69

那智の滝

那智勝浦町

70

水鳥公園の渡り鳥

米子市

71

三徳川のせせなぎと河鹿蛙

鳥取・三朝町

72

因州和紙の紙漉き

鳥取・青谷町

73

琴が浜海岸の鳴き砂

鳥取・仁摩町

74

諏訪洞・備中川のせせらと水車

岡山・北房町

75

新庄宿の小川

岡山・新庄村

76

広島の平和の鐘

広島市

77

千光寺の驚音楼の鐘

尾道市

78

山口線のSL

山口―島根県

79

鳴門の渦潮

鳴門市

80

阿波踊り

徳島市

81

大窪寺の鐘と遍路の鈴

香川県・長尾町

82

満濃池のゆるせきとせせらぎ

香川県・満濃町

83

道後温泉の振鷺閣の時太鼓

松山市

84

鳴門岬・御厨人窟の波の音

室戸市

85

博多祇園山笠の昇き山笠

福岡市

86

観世音寺の鐘

太宰府市

87

関門海峡の潮騒と汽笛

下関

88

唐津くんちの曳山囃子

唐津市

89

伊万里の焼き物の音

伊万里市

90

山王神社被爆の楠木

長崎市

91

通潤橋の放水

熊本・矢部町

92

五和の海のイルカ

熊本・五和町

93

小鹿田皿山の唐臼

大分・日田市

94

岡崎跡の松籟

大分・竹田市

95

三ノ宮峡の櫓の轟

宮崎・小林市

96

えびの高原の野生鹿

宮崎・えびの市

97

出水の鶴

鹿児島・出水町

98

千頭川の渓流とトロッコ

鹿児島・屋久町

99

後良川周辺の亜熱帯林の生き物

沖縄・竹冨町

100

エイサー

沖縄・与那城町


以上が「日本の音・100選」である。森羅万象が奏でる天然の音楽ばかりだ。「聞けや人々、美しき、この天然の音楽を・・・」という名歌がすぐに思い出される。
 さて我らの五感の内、聴覚と嗅覚はもっとも原始的な感覚だが、匂いと音が重なった音の風景は、耳の奥に残って生涯消え去ることはない。人々は、心の内なる原風景の音を聞けば、たちまちタイムスリップして、その匂いですら時代へと遡る。ナツメロが人気なのもその辺が絡んでいる。
また様々な音の分類をすれば、以下のようになる。

1、自然界の音―風、雨、水、潮、雪しずるの音など
2、動植物の音―小鳥のさえずり、虫の音、蛙の音、鹿の鳴き声、枯葉など
3、生活の音―厨の音、赤子の泣き声、機織の音、草笛、米を研ぐ音      
4、人事・行事の音―祭りの音、寒念仏の音、松明の音、羽子板の音
5、観念的な音―亀が鳴く音、霜の声、秋の声、田螺が鳴く声など

 さらに我が日本民族には、独特のこまやかな感性が宿る。たとえば「風の音」も、様々な表現で、こまやかに聞き分けているのだ。
  「風の音」にもいろいろ

春風の音、東風の音、涅槃西、貝寄せ、若葉風、川床風、隙間風、
虎落笛、秋風、浜風、花散らし風、青田風、颪風、木枯し、北風、
南風、春一番、雪解風、黄砂風、野分、山嵐、風鈴風の音・・・

 など、季節特有の風の音を、きめ細やかに表現しながら感知している。「春一番が吹いたぞ」などと聞けば、身も心も明るくなり、元気が湧いてくるのだ。反対に「木枯し一番」などと聞けば、思わず襟首を正す。

 さてここで諸兄に問います。「あなたにとっての、心の内なるスローな音はなんですか?」祭り太鼓、打ち水の音、百舌の高鳴き、夜なべの音、団扇の音、ラムネの音、松風の音など、自分史を辿れば、次々と耳の奥でよみがえるはずです。いかがですか。
 筆者の場合は、以下の音が耳奥に住みついている。

①火の用心の拍子木の音 ②かつを削りの音 ③川原のキリギリスの鳴き声
④郡上踊りの音 ⑤薪を割る音 ⑥行水の音 ⑦寒念仏の地声
⑧地蔵盆の鉦の音 ⑨雪晴れの夜汽車の汽笛 ⑩子供の産声

などなど、きわめて生活の匂いのする音ばかりだが、この音を聞けばストーンと原風景に落ちることができる。
 最後に「スローな音による村おこし」を数点提示しておこう。

    (1)、狼の遠吠えが聞こえる村
(2)、最果ての町、虎落笛の町
(3)、春の小川と水車の村
(4)、邯鄲の里、栄枯一夜の里
(5)、100万個の南部風鈴が鳴る町

などなど、音の風景を売りにする刹那的な企画はいかがだろうか。スローな音グルメを大いに楽しもう。

4-10、スローな格安旅行を楽しむ

 旅は急ぐものではない。まして定年後の旅は、せこせこと急ぐ必要もない。そんな旅人に人気なのがJRの「青春18きつぷ」だ。1枚11,500円で春、夏、冬の季節限定として発売される。
 1人だと5日間、JRの全線の普通と快速列車の自由席に乗り放題の切符である。いわば新幹線がなかった頃の、旅のスタイルの再現となる。青春という切符の名だが年齢の制限はない。「青春」という名前がうれしい。
 意を決して、この夏その旅に出ることにした。コースは日本海側を北上して、下北半島の恐山を目指し、帰りは八戸線経由で盛岡を経て、秋田経由で新潟までの旅路である。名付けて「恐山、この世の地獄に出会う旅」とした。
 まずコースの概略を示そう。


新潟→坂田→秋田→東能代→あきた白神→川部→青森→野辺地→下北大湊⇔恐山→野辺地→八戸→久慈→宮古→盛岡→田沢湖→角館→大曲→秋田→新潟

の4泊5日の日程を組んだ。
 しかし毎日が行き当たりばったりの旅となり、日が暮れれば宿に飛び込み、停車駅で珍しい案内があると下車し、旨いものがあると聞けば、その店で地元の訛りに酔うといったスケジュールとなった。まあ、日程通りとは行かないのが、この旅の常であろうか。
 鈍行電車は乗車時間が長い旅となる。しかしこれが意外と退屈しないのだ。車窓を眺めたり、乗り込んできたおばあちゃんと話したり、ワンカップ(これでなくてはいけません)を飲んだりと、気の向くままの時間が過ぎてゆく。時間が直線的に過ぎ去るのではなく、カーブを描き深く垂れて過ぎていく感じがする。

 同乗のおばあちゃんと仲良くなり、漬物などをご馳走になり話がはずむ。彼女も「青春18きっぷ」の旅人なのである。
  「どこまでいくんですか?」
  「うんじゃ、福井から新潟、坂田、余部を回り、新庄から平泉を折り返して、仙台の松島、そして山形の山寺まで。そのあとはまだ決めていない。急ぐ旅でもないけんのぉ~」
  「おばあちゃん、それは“逆奥の細道”のコースじゃないですか!」
座席の上に正座し直しながら
  「うんじゃ、前回はハルウララを応援しに、高知まで足をのばしたけん!」
  「じいちゃんが亡くなってから、こうした旅に出るようになったんじゃぁ~、まあ、1度だけ見ておけば、堪能するからのう、冥土の土産じゃ!」
おばあちゃんの旅は「今生を堪能する旅」なのである。そのおばあちゃんとは坂田で別れたが、旅とは本来こうしたものだと教えられた。
 この旅の特徴は、値段ではなく時間のぜいたく感が味わえることと、まだ何かに出会える期待感を楽しめることにある。新幹線や特急では見過ごしてしまう発見に出会えるのである。しかも「青春」という切符の名前が示すように、中高年が置き忘れた大切な何かを探す旅でもあるのだ。「フルムーンきっぷ」が贅沢な時間の消費を求めるのに対して、この「青春きっぷ」は「スローな遍路」の旅の意味合いを持つ。
 さらに駅弁を楽しみながらのスローフードな旅ともなる。この駅弁はその土地の三風(風味、風土、風景)文化を組み入れたものであれば、旅の喜びが倍増する。最近は百貨店などで駅弁大会などが開かれ、すっかり旅の情緒も薄れたが、それども駅弁は駅弁でありうれしいものだ。
「青春18きっぷ」の旅を皆で楽しもう。この旅には至福の時間がたっぷり詰まっている。


2 スローでウオッチング(18)

1、回転寿司が繁盛している。家族ずれも多く、週末の夕方は待ち時間が30分ほどかかる店もある。とにかく安くてメニューも豊富だ。注文した焼穴子やエンガワはしゃりが隠れるほどの大きさだ。
 しかし「待てよ、こんな大きいネタが百円で出せるわけが無い。なにか企業秘密があるのではないか」と、このところかなり気になりだした。
 その秘密は「代用魚」と「産地偽装」の魚を使うことにあるようだ。時には深海魚(アルアナゴ、アメリカオオアカイカ)や代用魚(ホンビスノ、カラスガレイエンガワ、アカマンボウ)などが多用されていると聞く。やはりそうか。仕方ないよな、と自嘲しても始まらない。安いものにはワケがある。それ以来ぱたりと足が止まった。
  回転すし業界の売上は年5,000億円程だと言う。しかし競争も激しく、さらに価格競争が激化している。日本の寿司文化よ、お前もか。

2、朱鷺10羽の放鳥が9月25日行われた。平成27年には60羽が佐渡の空に舞うことを目標にしている。心配は多くあるものの、やはり上手く行って欲しいと願う。これを機会に、佐渡の自然生態系は確実に本来の姿に戻り、人間も住みやすい島となる。
   評価が落ちた佐渡産のコシヒカリも復活するだろう。「皆様、右に飛んでいますのは、朱鷺の親子です」などとバスのガイドさんの声が弾む日も間近にくるだろう。一事が万事とは、言い当てた言葉である。朱鷺が傲慢な人間を救う。

3、9月14日は中秋名月だ。夜空にはくっきりと満月が浮かんだ。地上では虫の音が盛んに楽を奏でる。さっそく酒を片手にベランダで月見としゃれ込んだ。
  月光を深々と浴びると、何故か身体の中まで透明になる。頭の中も空っぽになる。そして太古の人間もこのような月を眺めていたに違いないと思うと、その繋がりを身近に感じる。卑弥呼さんとも繋がる。
  さらに草むらの蟋蟀も同じ月を見ていると思えば、森羅万象の繋がりが愛おしくなる。乾坤の静けさここにあり。
  風流人は月の窓辺に布団を引き寄せて、月光で読書したという。そういえばほろ苦い歌が思い出される。「月ついに天のものなり 君ついに妻となりては 戻す術なし」である。失恋の短歌だ。
  それにしても月は、とりとめもない妄想や来し方を手繰りよせるものだ。3合の酒はあっという間に空になった。

4、五泉の里芋を食べた。シンプルに茹でただけの衣被(きぬかつぎ)である。皮を剥いて、粉チーズ、柚子みそ、辛子マヨネーズ、みそごまたれ、塩コショウなどを好みに合わせて付けるだけである。
  これが実に美味い。小昼や酒の肴にもうれしい逸品となる。特に粉チーズとの相性は抜群だ。お奨めである。
 日本の里の数だけある言われる里芋だが、これから11月いっぱいが収穫の最盛期となる。

5、株価の下落が止まらない。あっと言う間に30%ほど下落した。釣瓶落としとはこのことを言うのだろうか。株とは疎遠の我らでも、実体経済が落ち込むと様々な弊害が起きてくるから、気持ちも沈みがちになる。
 まさに天下は秋一色である。ファストモードの姿の見えない恐怖に怯える今日頃ごろだ。