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2008年02月01日 09:01

VOL 9

1食のゆくえを考える(3)

3-4、踊る健康食材情報のゆくえ

 昼間のテレビコマーシャルを見ると、「食べたらやせる」、「髪の毛が黒くなる」、「皺がなくて年齢を間違えられる」、「血液サラサラ」など、健康情報とその商品が氾濫している。
 これだけ宣伝するのだから、企業にとってはかなりうまいビジネスであることには間違いない。
 そしてこれらの情報に飛びつく人々が多いことからも「健康と若さ」に関心が高いこともうなずける。「健康のためならば、死んでもいい」というパロディーが出てきても不思議ではないのだ。とにかく「○○○によい」というコマーシャルばかりが氾濫している。
 宣伝以外のテレビ番組の影響もすごいものがある。最近捏造で問題をおこした「発掘!あるある大辞典」や「ためしてガッテン」、「おもいッきりテレビ」などがその番組だ。高齢者の「みのもんた氏」への信頼度はお医者様より高く、「みのもんたが言っている」で、皆が信じると言われる(笑)。笑い話で済まされないところに番組の怖さがある。
 テレビ番組が流れると、瞬時に買いに走る人々もあとを絶たない。そしてスーパーからお目当ての食品が消え去る。もちろんスーパーは番組をチェックしており、品揃えをして待ち構える作戦を取る。まさに「踊る健康食材」の攻防戦と言える。
 今年はダイエット効果があるという寒天がブームとなり、原料のテングサ・オゴノリの在庫が底をつき、業界は冷静な協力を呼びかけることとなった。心太やモズクもそのブームに便乗して、活況を呈した。
 ここでよく目にする「ハマリそうな食材」を挙げておこう。

 いずれもお馴染みの食材ばかりである。この表をみて過去にハマった経験を持つ人々は多いはずだ。赤ワイン浸けになって、「適度にしなさい」と、お医者さまに叱られた諸兄も多いと聞く(笑)。
 さらに身体に良いからと言って「シラス、ゴマ、バナナ、ブルーベリージャム、野菜ジュース、ヨーグルト、納豆」などの「単品羅列型メニュー」のオンパレードに凝る家庭の主婦。そしてそれに困惑を隠しきれない亭主達や子どもたち。
 しかも一過性の主婦の「流行かぶれ」だから、家族にとっては迷惑この上もないことになる。食卓が荒れているといわれる所以である。
 このような「流行かぶれ」の人々が嵌りやすいのが、上記の食材である。
 最近ではポリフェノールなどの用語が定着した99年頃から、難しい情報にも関心が高まり、ビタミン、ミネラル、抗酸化物、細胞レベルで作用する食材へと関心は変化している。とくに抗齢化と癌などの免疫力強化に対して、人々は大いに関心を持ち、右往左往しているからさらに厄介である。
 このような健康と食の迷路に一条の光を当てているのが、企業主導の健康食品産業だ。とくにサプリメントやトクホと言われるものは人気がある。食材から有効成分だけを取り出したものが、サプリメントといわれる健康食品である。「日常の食事で不足がちな栄養素を補給する食品」であり、栄養補助食品と訳されている。
 この健康食品・サプリメントは約1,1兆円の市場規模ある。いわば効能のファスト化食品と言われるものだ。食品企業や医薬品企業は、この「魔法の粉」(有効成分)の開発にしのぎを削り、コマーシャルでの攻勢をかけている。
 そして人々はあたかも保険をかけるように、このサプリメントに手を出しているのだ。踊らされていると言えば言えなくもないが、それで健康管理が出来れば、まんざらファストも悪くはないと、免罪符としての役目を求めているわけだ。
 こうなると、スローフードな日常の食事体系さえしっかりしていれば、サプリメントなどは不要の代物だと諭しても野暮なことになる。「いいじゃないの、身体に悪くなければ!」なのである。
 このように人々の健康意識と真の健康の処方箋の間には、かなりの乖離があり、それすら分らないところに現代が抱える食の闇が存在する。まこと踊る健康食材情報にはお手上げの状態と言えるだろう。
 ここである学者の「食と生命の動的平衡」という啓示をご紹介しておこう。人間の体を構成する分子は、たえず入れ替わり、諸行無常であるという衝撃の事実を示唆した論である。
学者の名前はルドルフ・シェ―ンハイマー(米国の科学者)という。
この啓示を簡単に言うと

  1. 私たち生物と環境とは分子の流れによって通底している。
  2. 生体を構成している分子はすべて高速に分解され、食べ物として入ってきた分子と置き換えられ、身体の外の排出されている。しかも新しき分子と更新され続けられる。
  3. だから私たちの身体は、分子的な実体としては、数ヶ月前の自分とは全く別の物になっている。
  4. すなわち環境が常に私たちの身体をつねに通り抜けている。その流れの中で、私たちの身体は変わりつつ辛うじて一定の状態を保っている。脳細胞も例外ではない。
  5. これを「動的平衡」と呼んでいる。

 食べ物として入ってきたものが、生体内で燃やされて排泄されるだろと考えていたことが、実は既存の分子と置き換わるという衝撃的な事実にショックを受ける。今日の花子さんは、数ヵ月後には顔つきは同じでも、全く違う花子さんなのである。
 すなわち身体の実体は諸行無常なのだ。「食べ物が人間をつくる」という事実がここにある。これで身土不二(人間も自然の一部にすぎない)や伝統料理の重要性という食物連鎖と健康の関係が素直に理解される。ただし例外として、心臓と歯の分子は一生涯入れ替わる事はない。それ以外は日々歳々、移ろっているのである。

 肉食の欧米人がそのような体つきや皮膚、髪の毛の色をしていることも理解される。民族の食性とはこんな動的平衡の上に築かれたものなのだ。だから日本人がこのまま欧米食の異分子を取り続ければ、確実に身体は欧米人に近づく。
 ファーストフードを取り続ければ、生体のバランスを壊し確実に病魔に襲われることになる。子どものアトピーが3割を越え、糖尿病患者が800万人に達している日本。まさに異常である。食はその土地のものを食べよという、先人の教えはこんなことを予見していたからだと思われる。
 こう考えると我らの食性を無視した「お手軽健康食材」の摂取は、やはり怖いと考えねばならない。身体に取り入れる食べ物がそのまま分子の状態で身体を構成することを理解すれば、いい加減な「免罪符フード」は取れないからだ。
 一時のブームで、ある食材にハマるのもいいが、自分の身体を自分で守るのは、やはり民族の食性に適ったご飯を中心にしたメニューでしかありえない気がしてくる。
 「健康ならば死んでもいい」くらいに関心の高い健康へのあくなき欲望に対して、これからも様々な情報が飛び交うが、そのようなインフラの中で、情報に踊らされることなく、冷静な目で見極めることが大切になってくるのだ。
 またその見抜く力を身に付けるべきだ。多くの人々がスローフード運動に関心を寄せているのは、この「見えざる恐怖」を薄々感知しているからに他ならないからだろう。
 話は横道にそれるが、人間の食性について興味深いレポートを記しておこう。
 それはイヌイットの生活を取材している作家の椎名誠さんのお話である。その中で氏は、アザラシやカリブを狩猟して、それを丸ごと食べる人々の食性について、次のように述べている。
イヌイット(エスキモー)の人々は、魚や動物の生肉を糧にしている。しかも獲物の内臓から食べ始める。アザラシは胃袋を取り出しその中身(未消化の魚など)も余さず食べる。
 カリブは未消化の苔が詰まった小腸もそのまま生肉と一緒に食べ尽くす。彼等にはそのような食でしか、必要な栄養を摂取する術がないから獲物を丸ごとすべて食べ尽くす。
 考えたら野蛮な人種だと私たちは思うかも知れないが、獲物の命を頂いて有史以来生き延びて来たわけだから、それは立派な食文化であり野蛮などと言うのはあたらない。
 アザラシやカリブの分子が彼等の身体の分子と入れ替わり、命の連鎖を形成していると思えば、彼らの食のほうが添加物まみれの私たちの食より豊かで、芳醇なのではないかという気がする。
 そんなイヌイットの世界にも最近はファストフードが普及している。村にスーパーが進出し徐々に食が影響を受けている。本来の狩りの生活が続くことを祈りながら、私は取材を続けていこうと思う。
 食のゆくえを暗示する氏の報告に、満座の人々は何を感じたであろうか。

3-5、間違いだらけの健康情報のゆくえ

 定年後、時間ができて昼のテレビをよくみる。そのテレビで多いのが健康食品の宣伝だ。ダイエット、美肌など、これでもかと言うぐらいに垂れ流ししている。それだけ消費者のニーズが高いからだろう。1兆円産業とも言われ、成長し続けているのだ。
ここで突然だが、クイズを出そう。
<問>次に掲げる健康食品の宣伝文のうち、正しいのはどれでしょうか?

  1. 新陳代謝を活発にする
  2. 血液を浄化する
  3. アルカリ食品
  4. 脂肪を燃やす
  5. 体質を改善する

いずれも我らが信じている健康情報ばかりだ。
 しかし医者の目でチェックすると、これらは全て疑ったほうが賢明と言うのが正解である。うそー、まさか、テレビでよく宣伝している言葉じゃないの・・ということになる。
その理由

●新陳代謝を活発にする
     ⇒1民間会社が代謝のメカニズムを科学的に証明することは、極めて困難。単にイメージで使われている。
●血液を浄化する
     ⇒血液の排泄作用は、現代医学でもすべてが解明されていない。ましてひとつの健康食品や民間療法でできるものではない。
●アルカリ食品
     ⇒一世を風靡したアルカリ信仰は専門家によって完全に否定されている。

       血液は常に一定のPHで保たれている。
●脂肪を燃やす
     ⇒中性脂肪が脂肪酸とグリセロールに分解されることを意味するが、

       もんで叩いてもこんな変化はおきない。
●体質を改善する
     ⇒体質という言葉をあえて医学的に説明すれば、
        「体の状態を規定する遺伝的背景」となるが、簡単に変わるものではない。
 つまり残念ながら以上の健康情報はすべて、インチキということだ。ただし栄養補助(ビタミン、ミネラルなど)、病気の予防(EPA,DHAなど)などは重大な副作用はまずないから、たとえ効かなくても保険の意味で信じていいとは医者の見解である。
 以上の知識を持ってテレビの宣伝を見ると、ことの真偽がわかり、コマーシャルも「ようやるわ!」ニヤニヤとしながら面白く見られる。
 次は一番関心の高いダイエット食品についての売り文句についてである。ダイエット食品の宣伝文句は、だいたい以下の4点に分類される。

  1. 食欲を抑える
  2. 消化吸収を抑える
  3. 代謝を変える
  4. 消費カロリーをアップされる

 この内、1、2は脳中枢に働いたり、胃を膨らませたり、脂肪をそのまま対外に排出されることをアピールしている。しかし本当に効果があるとしたら、必要な栄養素も入らなくなり、生命の維持に関わる行為で医学的管理下でも難しい。素人が手を出すべきではない。
 次の3、4は医学的にあまり現実性がない。新薬の開発には「ざっと15年、150億円かかる」から、そんな医薬品並のハードルをクリアしたダイエット食品は、この地球上のどこにも存在しない。それでも多くの人々は魔法の痩せ薬や食品を捜し求めてやまない。人間の悲しい性だ。
 おそらく賢明な諸兄は、そのへんのことは理解しているのだが、宣伝されると「今回だけは、もしかしたら、私だけには、効くのではないか」という、藁をも掴む気持ちで飛びつくのだ。「ダイエットできれば死んでもいい」と思う人々が多くいる感じすらしてくる。

 さらに専門家のダイエットの公式は単純だ。「摂取したエネルギーから、消費したエネルギーを差し引いた残りが蓄積される、という算数の足し算と引き算のレベル」ということに尽きるのである。至極もっともな話だが、これを実現することが出来ないから、我ら煩悩の民は悩むことになる。
 ここで正しきダイエットについて、レポートしておこう。多くのダイエット食品はまゆつばものだし、都合のよい激やせ法も存在しないのだが、あきらめるのは早い。
以下のちょっとしたことの積み重ねが、実は健康とダイエットの両方を可能にしてくれる。専門家が教えてくれたノウハウである。
  (1)、朝食は欠かさないこと
  (2)、食卓であいさつする。「いただきます」と「ごちそうさま」を言う
  (3)、小皿で食べる。食べる分だけ取り分けてだす
  (4)、ゆっくり食べること
  (5)、脱ファミレス。栄養バランスが最悪
  (6)、買いすぎは厳禁。冷蔵庫をいつも空っぽにしておく
  (7)、日頃の行動を少し変える。一口ご飯を減らす、エレベータを階段に変える、
       散歩をする等の日常生活を改善を積み重ねる
  (8)、1年かけて来年の水着のシーズンに、間に合わせるくらいの覚悟を楽しむ

どれも早晩できそうなことばかりである。
 さて、間違いだらけの健康情報や誘惑に対して、われ等はいかに対応すればいいのだろうか。情報を垂れ流すマスコミや企業を一方的に責めて、憂さを晴らせばいいのだろう。それとも我ら自身の無知を嘆き、食材や情報を見極める力を持つのがいいのだろうか。
 意見の分かれるところであるが、自分の健康や身体は、自分の責任において守るべきであり、フードフェディズム(気まぐれな健康食)に陥らない見識と知恵を持つことが肝心だと専門家は口を揃えて忠告している。お手軽健康法には、それ相応の教養を持って対処したいものだ。

2スローでウオッチング(9)

1.年賀状が来た。その90%が印刷物である。何の感激もない無機質な虚礼その ものであり、読む気にもならない。
 しかし中には下手な手書きで宛名を書き、行間に一言を添えて賀状もある。そんな賀状に出会うと嬉しくなり、その人の人柄が見えてくる。ラブレターと手紙は手書きに限る。断然伝わる温もりが違うからね。

2.新潟市の沼垂に今は廃線になった駅がある。沼垂駅である。新潟駅からの引き込み線で、往年は東港で陸揚げされた荷で賑わった面影がある駅である。今は無人で誰もいない。
 その草生い茂る真っ直ぐに伸びる廃路に佇めば、役を終えた鉄路の寂しさがまのあたりに広がる。しかもレールに耳を置いてみても遠くから来る汽車の音は、今はもう響いてこない。さらに線路のレールの上をよろめきながら歩くと、黙々と必死に生きた昭和の自分の姿が重なってくる。
 そういえば昨今は鉄道ブームである。おそらく今の鉄道ブームにある背景には、このような自分との対話があるのだろう。
 すべての汽車はゆっくりと過去の中へ消えて行く。そんな作家の一文を思い出しながら、今日も廃路を散歩する至福の時間をいただいている。

3.日本料理や寿司の板前には女性の姿をみたことがない。いわば女人禁制の男社会の職場である。そういわれればそんな気がする。
 その理由を尋ねてみたら、いろいろな答えが返ってきた。化粧の匂いが邪魔をする。女性の手の温度は高く、それが生のものに影響を与える。調理場の縦社会に馴染まない、などというのが答えである。
 しかし家庭料理の担い手は女性であり、その理由にあたらない。一度は粋のいいおねえさんがにぎるお鮨を食べてみたいものだ。

4.今年の初詣客は最高の数となったようだ。白山神社も詣で客で溢れかえっていた。
 それにしても不思議である。我ら日本人は、知らず知らずの内に、初詣には行くものだと決めている。多神教の民族の所以であろうか。
 たしかに神事のないお正月などはありがたくもない。門松飾り→除夜の鐘→宮水汲み→四方拝→雑煮→お屠蘇→年賀状→初詣・・・などの一連の行事や風習をこなすことにより、また生まれ変わった日本人が誕生する。生きる活力も得る。
 この理屈では割り切れない仕草を、おめでたいと表現する日本民族の感性はすばらしい。角餅の雑煮を食べながら、祝いのお神酒に酔い、超スローな元旦を迎えた2008年です。