2007年12月01日 09:00
今回は五感と味覚に関することを考えてみましょう。味覚に関する知識は、食育の根幹に関わる教養となるから非常に重要です。スローフードな食育を考える上での必須の項目ともなります。
食育にとって、人間がもつプリミティブ(原始的、生理的)な五感をみがくプログラムは重要です。なかでも味覚教育は最重要となります。
まず五感について考えます。
五感とは「味覚、聴覚、視覚、触覚、臭覚」を言います。我ら人間はこの五感のアンテナを通して脳に情報を送り、知覚として蓄積し刷り込まれます。この情報を受けるのが大脳の記憶装置部分で2種類あります。
1、短期記憶―視覚や聴覚で覚える1瞬の記憶情報
2、手続き記憶―実体験で繰り返し行った学習情報
(1)の記憶はすぐに忘れるのが特徴であり、(2)は刷り込みとして潜在的に残り続けます。
また情報伝達学によれば、脳に送り込まれる情報の量の割合は、以下の通りです。

実に情報の83%が視覚から脳に伝達されています。しかも現代社会の情報の多くは、コンピュータやテレビなどの視覚からの得る割合が高くなり、もっともプリミティブといわれる臭覚、触覚、味覚の衰えが目立ちます。これが実は大きな問題なのです。
とくに子どもや若者の臭覚、触覚、味覚の衰えが著しい。したがってこの臭覚、触覚、味覚をいかに磨くかが、五感教育のポイントとなります。すなわち「手続き記憶」をいかに増やしていくかが大切なのです。
もちろん五感による情報伝達は、単独の感覚で行われるのではなく、五感が総動員されて、複雑に絡み合って脳に信号を送ります。
たとえばステーキの美味しさは、色と匂いと音(ジュウジュウという焼ける音)の複合情報から構成されて、脳の味覚領域を刺激します。これは「シズル感」という言葉で、表現されているのは周知の通りです。
かつおダシの味は、匂いと台所の音、そしてアミノ酸の総合力によって、我らの脳に快感をもたらします。納豆はネバネバの触覚と匂いによって、あの独特の味覚を醸しだします。味覚とはそのようなメカニズムで成り立っているのです。
となると食育が目指す味覚教育は、単に5味(甘、塩、酸、旨、苦)を感じ取るセンサーとしての味蕾を刺激する学習だけではなく、この五感を総動員する体験や実践を組み合わせることが、より深い食育となることになります。このことは後述するとして、味覚のセンサーである5つの味蕾の機能をまず理解しておきましょう。
日本では辛味を加えた6味が味覚の基本とされますが、まず5味が持つ機能や意味合いを理解しておくことが大切です。以下の通りです。
人類は必須栄養素(ブドウ糖、アミノ酸、ミネラルなど)と食の選別力(毒、腐敗)を、舌の味蕾という細胞に遺伝子として装備しています。この味蕾という細胞は10日くらいで入れ替わるのだが、まさに生命維持センサーの役目をはたしているのです。
この味蕾を刺激して、その情報を脳奥にインプットさせる作業が、味覚の刷り込みです。3歳児あたりがその刷り込みの最活動期となります。「三つ子の味は百までも」と言われる所以です。
この基本の味を子どもの頃に刷り込んでおかないと、人は生涯にわたり味覚音痴となり、味気ない人生を送る羽目に陥ることになります。腐った食べ物を忌避する能力も付かないのです。これだけの教養があれば、5味を刺激して鍛えておくことの食育の必要性が理解されるはzyです。
あとは悔いの残らない刷り込みを実践するだけです。その最強の方法が「基本の食」と言われる「ご飯、具入り味噌汁、おしたし、焼き魚」を食べつくすことです。それだけでまずは事足ります。
醗酵食材(味噌、醤油、かつお節、酢、酒、みりん、チーズなど)や旬の野菜のおしたし、ダシ、魚のタンパク(アミノ酸)が味蕾を通して、脳に記憶されればいいのです。また肉や脂身は本来人類が本能的に好むものだから、あえて刷り込まなくても自然に覚えます。以上が5味に対する教養です。

次は五感を総動員しての味覚教育について考えてみましょう。子どもの頃から、五感による良い刺激を脳に送り続ければ、脳の味覚領域は活性化され、統合され「実体験」としての味覚が身につくはずだからです。
それも「楽しい」とか、「快感」などという言葉で表現される実体験ならば、人間の脳は喜んでその情報を記憶させます。味覚を鍛え研く実体験は、楽しくあらねばならないと言うのがスローフード的食育のやり方だと考えればいいでしょう。
まず味覚と食卓の関係をみてみましょう。美味しい食卓とは五感が総動員された舞台であると考えると分かりやすくなります。お皿のメニューだけでは、我らは美味しいと感じません。
ファストフード業界が食卓のTPO(時間、場所、機会)の提案を盛んにテレビで訴求するのは、美味しさの本質を知り尽くしているからです。カップラーメンでも恋人と分け合って食べれば、それは至福のご馳走となります。このことを理解すれば、味覚とはお皿の外からも影響を受けることがわかります。
美味しさには
があります。
これらはまさに五感から感じ取る美味しさに他なりません。スローフードの食育活動が単なる味のテースティングに終わらずに、五感を重視した学びを行うのもこれらの理由によるのです。味覚教育は単独よりも、五感を総動員したほうが楽しく、効果もあがることを理解しておくべきです。
その点を踏まえて「スローフードにいがた」が最も力を入れているのが、五感を磨く年間20件に及ぶワークショップです。地酒の飲み比べも評判がいいです。
それらの会は楽しく議論も弾み、仲間も増えています。しかも実体験による様々な学習が必ず組み込まれており、老若男女がそれぞれの目的をもって参加している意義は大きいのです。
最近の実体験を挙げると
など新潟の伝統文化を学ぶプログラムも組み込まれています。この実体験は仲間の同士のビジネスにもつながり、地域ブランドの開発へと発展しているのです。
また五感を磨くには、日頃のライフスタイルが大切となります。たとえば、たまには野山を駆け巡り、茂みに潜んで蛇と睨みっこしながら野糞をしてみましょう。
サッカーや野球は無理をしてでもスタジオに出向き、生のスタンドの歓声や怒号、汗、匂いを身に浴びながら、吹き抜ける風、露店の烏賊焼きの匂いに鼻をピクピクさせてみるのも身体全体の感覚を磨くのに役に立ちます。
散歩しながら街の匂いや美しい音、耳障りな音、朝市の雑踏のやり取りなどの触れるだけでも、我らの原始的な五感は研ぎ澄まされます。
スローフード的な食育は、このようなスローな日常を少しでも取り戻すことから、まず始めるべきだと確信しています。
2007年11月17日、ママたちの食育学会が開催されました。今回の食育体験レポーターは渡辺政子氏です。
演題は「出前食育講座に参加して」です。聴衆は20名です。
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<講演内容>
私は4人兄弟の末っ子で生まれ、過保護に育てられました。ですから人前でお話しするのは苦手です。本日は意を決して私の母のオリジナル料理と、11月6日の出前食育講座に参加したときのお話をしたいと思います。
オリジナル料理は後ほど皆様にご披露することにして、まずは出前講座のことをお話いたします。
出前講座は新潟の牡丹山小学校です。今回の講座は3年生の児童156名を相手にした豆腐つくりです。講師は川上とうふの澁谷社長ご夫妻です。「スローフード・にいがた」からはサポーターとして、松島欣子先生と佐藤サダ子さんと岩田桂さんと私がつきました。担任の先生も4名加わり、3回に分けて豆腐づくりに挑戦です。合計24グループの児童が替わるがわりに教室にやってきました。
しかし澁谷講師の指導のもとで手際よく進められ、ほぼ12:30には終了しました。
豆腐の出来上がりは言うまでもありません。それはそれは美味しい豆腐ができました。はじめはおっかなビックリだった子供たちも、出来上がった豆腐をみて、ざわめきたちました。もちろん笑顔で試食しました。
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<牡丹山小の豆腐教室> |
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「感想は?」と聞くと、皆一様に「甘い」「プリプリしている」などの言葉を連発していました。「豆の味がする」という児童もいました。「普段食べているお豆腐とはダンチに違う。こちらが数倍美味しい」と、心配するほどの量を食べる子もいました。
最後はお豆腐の味を言葉で表すことにしました。「どんな味?」という問いかけを、カードに記入してもらいました。
その中から少しピックアップしておきます。
<児童の味覚表現集>
小学校3年生にしては、しっかりとしています。本物のお豆腐の味を見事に表現してくれました。私は本当にビックリいたしました。この経験は子ども達の脳裏にしっかりと刻まれて、将来の役にたつことと思います。
また、優しい子がおり、私に「おばさんも食べて」と言って、自分の食べているお豆腐を自分の箸で食べさせてくれました。私も思わずあーんをして食べました。自分の孫でもこんなことはしません。ですからこんな優しい心を持った子に出会えたことが嬉しくて、心温まる思いがしました。
今日は単なる豆腐づくりの講座でしたが、これらの経験を通して一石何鳥にも広がる貴重な味覚力が、子ども達に醸成されると確信いたしました。私自身もこのような貴重な体験をさせていただき、感謝の念で一杯です。本当にありがとうございました。
それでは今日は子ども達が食べたことないと言っていた「おから炒り」と、私の母のオリジナル味噌味の金時豆の煮豆を皆さんで試食してください。本日は私のつたない話にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
以上が渡辺政子氏の論旨です。
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| <渡辺氏とうわさの金時豆煮> | |
で、恒例の渡辺氏の「金時豆煮」と「おから炒り」の試食会です。そしてその感想を表現します。今回は金時豆煮に的をしぼり、キャッチフレーズのラベルを貼ることにいたします。
金時豆の投票の結果は以下の通りです。
決まりました。次のラベルを貼りことといたします。
今までも、そして、これからも食べたいという気持ちを込めたフレーズが出来上がりました。渡辺政子氏にはぴったりのラベルだと思います。
わずか20分足らずの渡辺氏の体験講座でしたが、ほのぼのとした内容でした。会場は拍手喝采です。次回は来年の1月19日に、山田キヌ子氏の体験学講座を予定しています。
「ママたちの食育学会」の特別講座をレポートいたします。講師は新潟在住の小山信也氏です。青果卸業を経営した経歴の持ち主です。
演題は「かしこい野菜 果物の選び方」です。小山氏の講座内容は以下の4点です。
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| <小山信也氏> | |
<論旨概略>
1、かしこい野菜・果物選び方
(小山氏のアドバイス)
わが国の林檎には様々な種類がある。その種類は大きく分けて2つに分類されます。
林檎特有の「甘さ、酸味、硬さ、大きさ、歯ざわり」などは、外来種との交配で、様々な品質改良されてきました。
産地は青森と長野などの寒冷地が中心だが、最近は山陰や京都、新潟でも栽培されている。林檎の南限が下がっている。
おもな林檎の交配種は以下の通りです。

ちなみに新潟発の果物は2点あります。さくらんぼ(さとう錦)とル・レクチェ(西洋梨)です。いずれも秋田や山形に普及する礎を築きました。
また種無しの八珍柿の原木は、新津に現存しており、その生誕は謎と言われています。なお林檎の保存は、暗くて冷所に紙袋などに入れておくのが良い方法です。
身近な植物に意外な使い道があるものです。入浴剤としての楽しみ方です。漢方にもその効用が記されています。その代表例と効用をご紹介しましょう。

<効能>
その他「白菜」「干し菜」「薔薇の花」「ハーブ類」など好みの植物も楽しまれています。一度「ためして合点」すればいいでしょう。
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小山氏最後の講座は、せり売りの仲買人が使う指数字です。我らには異様に思える指先のやり取りのあれです。手話に近い独特な数字表示手段です。その指の出し方は以下の通りです。
早速小山氏の実演を真似ながら皆で挑戦です。
しかし指が硬くなった我らには、なかなかの難題です。やれば血行も良くなり、頭の体操になります(笑)。
<後記>
小山氏の講座は身近な内容であり、参加者からも具体的な質問が多くでました。野菜の保存方法や間違いのない選び方など、台所を預かるママさんたちの本音が質問となりました。青果卸一筋に生きてこられた小山氏の講義内容には、心魅かれるものが数多ありました。
当学会講座に参加希望の方は、下記までお問い合わせください。
〒951-8067 新潟市中央区本町通七番町
石山味噌醤油(株)内
「スローフード・にいがた」事務局
ママたちの食育学会宛
電話:025-228-9462