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2007年11月01日 12:41

VOL 6

○ママたちの食育概論(その4)

先月号に続いて、以下の2点について考察を加えておきたい。
3-7、食料自給率と食卓に関する教養
3-8、ファストフードと子どもたちに関する教養
食育を考える上での教養となる項目である。

(3-7)、食料自給率と食卓に関する教養

 日本の自給率は40%を切り、食糧の60%を輸入に頼っている。アメリカ(122%)、フランス(121%)、ドイツ(100%)、イギリス(74%)などと比べても異常な自給率の低さだ。
 その低さの主な原因は日本人の食の変化が挙げられる。米、野菜、大豆、魚中心の生活から欧米並みの肉類、パン類、油脂類などを食べる割合が増えたからだ。牛や豚の飼料は90%近く輸入に依存しており、まさに洋穀和畜の状態である。これらをまとめたのが以下の表である。

 この低い食料自給率がどのような問題を含んでいるかの議論は、様々になされているが、これと言った解決策を見出せないでいる。
 国民全体の危機意識が薄く、その怖さに気づいていないか、気づいていても見て見ぬ振りをしているのが現状である。食料安保という概念が稀有で、輸出の工業製品の代替として食料をお金で買えば良いという脳天気な国民性も災いしている。
 しかも農業生産の我が国のDNPに占める割合は、わずか1%足らずであり、経済界も企業の経営者の多くは農業を軽んじている。かって農村の優秀な若者が都会に出て、工業生産の担い手になった歴史的背景も、今は、すっかり忘れられている。
 確かに石油が十分にあり、自動車を生産して食糧を買うことができるという状態が永久に続くのならば、食糧自給を深刻に捉えなくても良いかも知れない。しかしその石油資源が2035年頃から枯渇し始めて、事態は一変する可能性が極めて高い。
 工業だけではない。石油に依存している現代農業も破壊的な打撃を受け、食糧自給率も40%から25%くらいに激減すると予測されている。こうなると幾らお金を用意しても、食料を海外から調達することは困難になる。
もう少し現在の食料の生産現場の構造を見渡してみよう。以下がそのまとめである。

 生産現場は高齢化がすすみ、団塊の世代家族が帰農するにしても、農村の過疎化はとまらない。医者になろうとする若者は多いが、農業を継ごうとする若者は極めて少なくなっている。農業の将来に見切りをつけた親達が、子どもを都会へと押し出しているからだ。これを「平成の出稼ぎ」と呼んでおこう。
 これに対して、先進国では農業従事者が30歳から50歳にかけて多く働いている。以下の農業従事者の平均年齢をみれば、日本の危機的な状況がはっきりとわかる。

 

<各国の農業従事者の平均年齢>

 如何に日本の農業が斜陽産業であるかが、理解できる。我らの食卓の外側には、実は、このような厳しい現実が繰り広げられており、政府の農政改革策があるにせよ解決の糸口さえ見つかっていない。
 この現実をしかと理解すると、食料の大量廃棄などと言う、ちぐはぐな生活を見直さねばならないことになる。なんと日本では毎年約1000万トンの食べものがゴミとして捨てられている。大人1人当たり、年間で170kgにも及ぶ量である。
 金額に換算すると約11兆円にもなり、これだけで年間約900万人の餓死する人を救えるとも言われている。このような現実を子ども達に伝えると、泣き出しそうになる子どももでてくる始末だ。
 今、我らにできることは、「残さずに食べ、ゴミにしないこと」と「本来の日本食に回帰する」ことの2点である。食資源の浪費を最大限に抑えて、食料自給率を上げることしかないのである。
 このへんを踏まえた言葉が「もったいない」である。世界の流行語にもランクされているが、恥ずかしいことと言わねばならない。
 またこれからは、土から離れた人々が市民農園などで、自給生産に勤しむことも視野に入れた町づくりや、インフラの整備が大切になってくる。ロシアのダーチャ(週末農園)がそのお手本である。これこそまさにスローフードな生き方と言えるのであろう。
「衣食足りて礼節を知る」こそが、日本民族の教養である。


(3-8)、ファストフードと子どもたちに関する教養

 子どもがファストフードを好むのは、その味にある。塩と砂糖、油による魔性の味にある。しかも濃い目の味付けで味覚が麻痺するために、薄味の日本食がもの足らなく感じさせている。
 もちろんファストフードはそれなりに人類に貢献しており、ゴリゴリと否定する必要はないが、やはりネガティブな部分は教養として覚えておかねばいけない。とくに味覚の成長期にある子どもたちには、厳格に教えこむべきだ。
 ではどのような食べものを、子どもが実際好むかについてみておこう。以下がそのまとめである。  

 

 覚えやすく言えば「か、ら、す、や、は、は、こ」ということになる。どれも癖に美味しい食べものばかりだ。いわば快楽の食の部類に入る。
 コンビ二弁当に頼る大学生の食事もこの範疇に入るだろう。小学生がその大学生の食事風景の写真をみて、絶対になりたくないと思う将来の食の風景に重なるのである。
「か、ら、す、や、は、は、こ」はたしかに美味しい。しかし楽しんでばかりもいられない。砂糖まみれ、油や塩まみれは、食べ過ぎると糖尿病や肥満になる可能性があるからだ。好物が体を痛めることは心外であるが、多くの医師が警告を発していることを重くみるべきである。
 このネガティブな要素を払拭しようと大手ハンバーガー企業やスナックメーカーが、栄養のバランスや正しい食べ方の食育を始めている。社会の厳しい目を意識しての所業だが、それだけ神経を尖らせている表れともいえる。
 アメリカの学校ではソーダ水等の飲料自販機が撤去され始めている。揚げ物に使う油の組成規制も業界が自主的に行って、波紋を起している。訴訟大国であり、肥満大国アメリカの悩みが透けて見えてくる動きである。
 さて次の教養は、子どもたちが硬い食べものを嫌うという現実をみておこう。噛むことの効用と重要性については、多くの指摘がなされているが、食べものは柔らかくなる一方である。子ども達と硬い食べものの関係をまとめると以下の表になる。

 全般に硬めの食べものが敬遠されていることが頷ける。念のために「噛む効用」についても表でまとめておこう。以下の表がそれである。 

噛むことの効用と恩恵はすごいことが分かる。
 古代食や歴史食の文献をみると、先人たちは随分多い回数の「噛み」をしながら食事を楽しんだことが分かっている。
たとえば1回の食事における噛んだ回数と所要時間は

・卑弥呼(3,990回)(51分)
・源頼朝(2,654回)(29分)
・徳川家康(1,465回)(22分)
・昭和10年頃(1,420回)(22分) ・現代(620回)(11分)

  あの時代で、83歳まで生きた卑弥呼さんの長寿の秘訣は、この噛むことによりもたらされたと考えると、俄然関心が湧いてくる。しかも学校の子ども達に、このことを話すと、全員からどよめきがはしる。
 噛めばかむほど旨味がでてくる「するめ」などは、今や子どもたちのおやつには出てこないが、家族の茶の間には是非備えておきたい一品と言えるだろう。


○ママたちの食育体験レポート(2)

2007年10月25日のママたちの食育学会での、本山れい子氏の貴重な食育体験講座をご紹介いたします。
演題は「食育は二人三脚で」です。聴衆は35名です。 

本山れい子氏

<講演内容>
長岡在住の本山さんは4人家族です。勤めながら2人のお子さんを育てた現役の主婦です。その子ども達も今は家を離れ、ご主人と2人暮らしです。
本日の論旨は以下の5点です。

1、好き嫌いのないことは幸せ
2、子供は家族の反応に敏感
3、ある実験から体得したこと
4、手づくりはすばらしい
5、我が家の逸品

 

論旨をまとめると以下の通りです。
 食べられるものが多いほど、子どもは幸せであると思い、何でも食べられるような育て方に気を配ってきました。人参やごぼう、時には山菜、そして五分づきの米なども取り入れながら献立しました。好きなものだけを用意することは避けて、あくまでも地物の産物を手づくりするように心がけてきました。
 そして結果的に子ども達は、苦味のある食材にも抵抗なく手を伸ばし、ゆっくり噛むと五分づきのご飯が甘いということも理解したように思います。しかし早食いの夫は今も白いご飯が好きです。(笑い)。
 にんじんがあまり好きではない夫は、子供たちの前ではそんな素振りを見せずおいしそうに食べていましたが、ある日、「この人参は美味くないなぁ」と発したことがありました。そんなことが何回かあったでしょうか。まったく食べられないわけではありませんが、子供たちは、大ぶりのにんじんが苦手です。子供は家族の顔色や一言に敏感に反応します。
 親が何でも美味しいそうに食べると、子ども達もすすんで食べると言われていますが、まさにそれを実感しました。大人の反応は、子供たちにもすぐ伝染します。夫婦の仲が悪いとすぐ子ども達にも伝染すると同じように、食卓やしつけにもそれが言えます。
また夏休みにある実験をいたしました。

1、保存料の入った市販のパン
2、無添加のパン

の経時変化を観察したことがあります。その結果は、如実に現れました。保存料の入ったパンは2週間経過してもカビは生えませんでしたが、無添加のパンは数日でカビが生え始め、無残な姿になりました。
 もちろん添加物を、すべて否定するつもりはありませんが、それ以来、市販のそのパンには手が出なくなりました。市販のハムやソーセージなどもよく表示を確かめながら、買うようにしています。頭では添加物の安全性を理解していますが、どうも食指が動かないというのが、多くの人々の実感だという気がしています。
 こうなるとあとは手づくりに頼るしかありません。手作りの良さは分かっていますが、問題は限られた時間の中で、いかに効率よく手づくりするかです。職を持つ女性にとっては容易なことではありません。家族の協力が必要になります。とくに夫のフォローは大切です。
 幸いに夫は多少料理を作ることができます。特に餃子は、子ども達が誉めると快く引き受けてくれます。「男子厨房に入るべからず」などと言われたのは、もう昔の話です。今は「男厨」は男達の領域に入っています
 こうして我が家では、極力手づくりするようになりました。第一、手づくりって「安心、経済的、美味しい」です。また家の中に料理の匂いが漂い、それが幸せの匂いなのだと実感できます。手づくりの良さは、この五感の楽しさと、それが幸せにつながる充実感だと感じています。
 我が家にはまだこれと言った誇るメニューはありません。母の逸品である「しょうゆのお赤飯」と「笹団子」を引き継いで次に伝えたいと思っています。夫婦2人が(子供を取り巻く家族が)、それぞれの立場で、子ども達の未来を考えた食のあり方を実践することが極めて大切ではと思います。それが家庭における食育だと考えております。

 

 以上が本山氏の論旨です。
そして本山氏の貴重な体験談の後は、いよいよ試食会です。本山氏手づくりの逸品の試食会です。本日のメニューは2品です。

○手づくり「煮豚」
○手づくり「マーマレード」

 

全員で試食して、それぞれの市販品とのテースティングの違いと好き嫌いを投票します。
結果は2品とも90%の票を獲得して、本山氏の圧勝でした。
 で、恒例の最後の仕上げです。本山氏の食卓にキャッチフレーズのラベルを貼らねばなりません。記憶に残すためです。


「やっぱり 手づくり れい子の逸品」

 

 これしかないということで、以上の言葉に決まりました。本山氏を表現するにふさわしいフレーズが生まれました。
 わずか30分足らずの本山氏の体験講座でしたが、大きな拍手が会場に響きました。働きながら手づくりに力を入れてきた貴重な実学を、食育の他山の石として学んでいきたいと思います。
次回は11月17日、渡辺政子氏の体験学講座を予定しています。



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ママたちの食育学会宛
電話:025-228-9462