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2007年11月01日 12:39

VOL 5

○村上の鮭文化を守り続ける人々

 新潟の村上は、平安の昔から鮭を大切に育んでいる城下町である。市内を悠久と流れ、日本海に注ぐ「三面川」は、秋ともなれば鮭が銀鱗を躍らせて遡上してくる。明治11年には人工孵化に成功して、鮭の放流が始まったという。
それを伝統漁法で捕えて、独特の鮭文化を営々と営んでいるのだ。市内にはその伝統を受け継ぐ老舗が数多くあり、商売に励んでいる。
 さらに11月も過ぎると村上の家々の軒下には、塩引き鮭がぶら下る。その風景は村上の風物詩ともなっている。半年も干すと旨味が増して、「酒びたし」という独特の食材に変身するという。もちろん村上独自の名物である。
 そんな村上で代々、鮭製品の加工販売を営む(株)永徳(永田政義社長)を、「スローフード・にいがた」のメンバー40人が訪ねた。2006年の11月初旬のことである。



三面川のサケ漁

鮭の干し場

 新潟に在住しながら、めったに見たことのない経験だから、参加者は色めき起ったのは言うまでもない。現在の鮭の遡上数は3万尾くらいで、貴重な漁獲資源にもなっている。
 放流数は800万尾で、回帰率は0,3%くらいだという。俗に「千三つ(せんみつ)」という確率の語源はここからきている。
 次は永徳さんの鮭の塩引き体験会に参加するために、新装なった作業場に赴いた。永田社長の鮭講座から始まり、実際の「塩引き」や「はらこ仕込み」を体験する。
 捌く鮭は残念ながら北海道産だが、天然ものの大魚である。三面川の鮭だけでは数が足らないために、北海道の漁港に入札して天然の鮭資源を取り揃えるのだという。



永田氏の鮭講座
永徳の本社
永徳の本社

 また最近は養殖ものが増えて、北欧や南米からの輸入が増えていると永田社長は、危機感を募らせている。養殖の薬害を懸念してのことだ。回転すしの鮭ネタは、すべて海外の養殖もので占められているとも指摘する。永田社長の頑固なまでのこだわりが、ひしひしと伝わってくる。
 さらに興味深い鮭の「母川回帰性」のお話を聞いた。鮭の習性はいまだ謎だらけだが、鮭が母川に戻ってくるのは、川の水に含まれるアミノ酸をかぎ分けて、それを頼りに回帰するのだという。
 そのアミノ酸は河口にある森から流出した成分である。森が滅びると魚も滅びるといわれているが、どうやら自然界の連鎖とは、そんなことをいうのであろうか。
ちなみに我ら人間も、このアミノ酸(ダシの成分)を味覚に記憶させる本能が備わっており、お袋の味とはこのダシのことである。このダシの味覚教は食育の大切な教養となっている。
 鮭の講座を受けた後は、鮭のフルコースに挑戦である。場所は瀬波温泉の大観荘で、佐藤料理長の鮭づくしの会席である。鮭を丸ごと捌いた見事な料理だ。
メニューを紹介しておこう。



お品書き

    • 鮭と大根の粕煮
    • 塩引き鮭
    • 岩船産コシヒカリの鮭の押し寿司
    • 鮭の竜田揚げ
    • はらこの醤油漬け
    • 鮭白子のうま煮
    • 鮭の姿造り
    • 鮭の南蛮漬け
    • 鮭の川煮
    • 氷頭せんべい
    • なわた汁
鮭づくし フルコースメニュー

 村上の鮭文化とご馳走に酔い、永徳さんの鮭にたいする真摯な姿勢に感動したスローフードなワークショップであった。しかも村上の鮭文化は、町屋起こしとともに、なつかしき未来へ進化していこうとしている。
 この村上にもやがて厳しい冬将軍がやってくる。と同時に新しい稚魚の孵化がはじまる。悠久の命の連鎖をつなぐためである。そんな村上の自然が織りなすドラマを思い浮かべながら、40名の我らは新潟へ帰路についた。感動のワークショップであった。