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2007年08月01日 21:40

VOL 3

1 食卓にせまる危機(1)

 食品製造の隠された裏側や、危険な食卓の現状を暴露する出版とメディアの報道が盛んである。「添加物は危険だ」「この健康食品は身体にいい」「遺伝子組替えは危険だ」「養殖魚は薬品漬けで危ない」などと、あたかも正義の味方のごとき情報を垂れ流す。そしてその「食」の情報に多くの国民は踊らされ、まるで氾濫する情報のなかでただ溺れている感じがする。
 かたや「食料安保」など、「食」に関する本質的な議論は置き去りにされ、1960年度には79%だった食料自給率は、2004年度には40%にまで半減している。しかもこのまま行くと、食料資源の争奪戦に日本は後進国に負け続け、1億2000万人の食卓は一気に崩壊を迎える。
 現に魚類は他国に競り負けて、輸入大国日本の存在価値は揺らぎつつある。アメリカ産の牛肉ですら、すでに日本以外にもアメリカの内需を含めて、買い手がいくらで現れているのだ。近い将来にはBSEで過敏な日本には輸出しないとする産地が現れる可能性は大である。
 しかし日本のそんな現実の、「今、ここにある、危機の予兆」には、誰もが目を背け、「○○を食べれば××に効く」などと、あいも変わらず無知な議論や情報収集に明け暮れている。お金さえあれば、食資源などはいくらでも海外から買えると、傲慢としか思えない日本の愚かさはまるで笑い話しである。
 どこかがおかしい。何か大切な基本を忘れている。それが我が祖国日本と日本人なのだ。いわゆる「食卓に迫る危機」が深刻になっているのに、気付こうとしないのだ。いや気付いている人は多いのだが、どうにもならない現実に、口を閉ざすしかないのだろうか。

そんな閉塞感を持つ人々が一縷の希望を持ったのが、スローフードという運動である。
スローフードは食のグローバル化に危機感を抱く運動だからだ。瞬く間に我が国にも運動の火の手が上がった。日本での支部の数はおよそ45ある。会員は約2,000名である。誕生してまだまだ日が浅く、それぞれの支部は暗中模索の状態だが、食育基本法や地産地消運動を念頭のおきながら運動している。
 そんなスローフード運動の一端を担う立場から、矛盾や誤解に満ちた日本の食事情とその課題を、シリーズに亘って現実的な視点で以下の議論をすすめたい。

<議論の内容>
1、食品添加物って、そんな悪いの?
2、歪んだ健康ブームの背景
3、間違いだらけの「食のリスク」
4、ポジティブリスト制の功罪
5、遺伝子組替え作物は恐ろしい?
6、有機野菜の本当の目的は?
7、根強い国内産信仰への懐疑
8、養殖魚は安全性なの?
9、激化する食料資源の争奪戦と食料自給率問題
10、スローフードが果たすべき役割

1-1、食品添加物って、そんな悪いの?

 健康志向の消費者が目の敵にしがちなのが、化学、人工物のイメージを帯びた食品添加物や調味料だ。だがはたしてそれらはどれだけ危険なのか、理論的に理解している消費者は圧倒的に少ない。情緒的に「食品添加物=悪」のイメージで捉えている。
 現代、化学的に合成された食品添加物は357品目ほどあり、厚生労働省によって認可されている。食品添加物の役割は、保存料、着色料、香料などと用途別に分類されている。そのへんをもう少し詳しくお話すると次の通りである。
 認可されている食品添加物は以下の4つに分類されている。

1、指定添加物
2、既存添加物
3、天然添加物
4、一般飲食添加物

これらの使用目的は次表にまとめられる。一般市民にとっては、教養として理解しておけばいいだろう。食品を選ぶときの尺度のなるはずである。

<食品添加物の目的>
指定添加物 使用目的
調味料
食品に旨味を加える(L-グルタミン酸ソーダーなど)
甘味料
甘味を加える(キシリトールなど)
酸味料
酸味を加える(クエン酸、乳酸など)
強化材
食品の栄養素を強化する(炭酸カルシゥムなど)
香料
香りを加える(酢酸エチル、ピペロナールなど)
酸化防止剤
油脂などの酸敗を防ぐ(エリソルビン酸ナトリウム)
保存料
カビや細菌などの発育を抑制擂る(ソルビン酸など)
防カビ剤
かんきつ類のカビを防止する(オルトフェニルフェノール)
着色料
食品に色をつける(食用黄色4号、β―カロテンなど)
発色剤
肉類の色を保存する(亜硝酸ナトリウムなど)
殺菌剤
細菌などを殺し食品の保存や飲料を消毒する(次亜塩素酸)
漂白剤
食品を漂白する(二酸化硫黄)
乳化剤
水と油を乳化する(ショ糖脂肪酸エステルなど)
増粘剤
食品になめらかさや粘り気を加える(アルギン酸ソーダー)
膨張剤
パンなどに膨らみを与える(炭酸アルミニウムアンモニウム)
小麦粉処理剤
小麦粉を漂白して品質を改良する(過酸化ベンゾイルなど)

ちなみに情報性の高いものには、「甘味料(サッカリンNa)」[保存料(ソルビン酸K)]のように、用途名も併記するのが一般的となっている。
 また食の専門家が、なるべく避けて欲しいという食品添加物は以下の4つである。

1、ソルビン酸・ソルビン酸K
2、赤色104号・106号(外国では認可されていない)
3、サッカリン
4、リン酸塩

いずれも健康を損なう恐れが指摘されている添加物である。以上の添加物は、すべて表示義務があり、パッケージの表示を見れば確認できる。疑問があれば買わないですむ。
 しかも使用が認められている添加物は、ラットやマウスなどを用いた動物実験で、国際機関が無害と確かめた量の通常100分の1の量を「1日摂取許容量」として定め、さらにそれよりもはるかに少ない量が、実際の使用基準として決められている。
 したがって大量摂取した場合の毒性を取り上げて、ことさら危険性を煽るのは全くのナンセンスである。今の日本、コンビ二やスーパーなどで普通に売っているものに危険なものなんて、常識ではありえないのだ。
 ただし漫然と加工食品を食べていれば、一日に約10g、年に添加物だけで2~4kg摂取することになる。食塩の摂取量とほぼ同じである。その量を人間の生涯に換算すると、なんと相撲取りの小錦の体重に匹敵する量の添加物になる。それだけの添加物を摂取しても日本の平均寿命は世界のトップレベルを維持している。

筆者も人体実験よろしく、添加物の塊の加工食品を40年間食べ続けているが、これと言った異変は出ていない(笑)。だから安全だとは言い切れないが、リスクとメリットは同時に内在することは理解できる。
葬儀屋さんの話で「近頃の仏さんは腐らなくて、日持ちがする」と、保存料を食べてきた影響を指摘してくれるが、本人はすでに死んでいるからブラックユーモアで笑い飛ばすしかない。

<考察>
 冷蔵庫が出現してから、食べ物の保存を競う食品添加物が使われ出した。その便利さが、多くの主婦の手から調理のわずらわしさを軽減した。食品の価格も大量生産で低くなった。この恩恵は計り知れない。ファストフードの恩恵だ。
 いわば消費者が求め、選んだ食品添加物の道と考えるべきだ。添加物や調理食品の依存度を高めているのは、実は消費者自身なのだ。そんな現状を傍観的にみて、添加物は悪だと単純に考えるのは、もはや駄だっ子の世界の何物でもない。消費者エゴそのもののである。
 しかも自分に都合のよい理論、情報を垂れ流している人々や業界の欺瞞を見抜く目や知識を持つことにも真剣でなく、不安だけを募らせる。本当の危険は、些細な食情報に流されて、「食」や「添加物」に関する議論を忘れてしまうことだ。
 また100%の安全を保障する食品や、添加物などこの世には存在せず、いかなる食品にもリスクがあることを肝に銘じることが肝要だ。いたずらに食品添加物を「悪魔フーズ」として槍玉に挙げるのは、賢い消費者としては寂しい限りである。
 ただ願わくば、ダシは昆布とカツオからとる。ファストフードの食べすぎには注意するくらいの、大らかさが我らには必要と言える。教条的にファストフードの負の添加物を一切否定するだけでは、何らの解決にはならないからだ。
 むしろそれらを多用しなければならない、我らの環境や食意識について、議論すべきであり、責められるべきは、我等自身の怠慢な生き方なのである。

1-2、歪んだ健康ブームの背景

 現在の人々の健康意識について述べておかねばならない。結論を言えば多くの人々は、「自分は食への意識が高いと錯覚し、いわゆる“ヘルシー食品”を利用することで、身体に良いことをしているという自己欺瞞に陥っている」と指摘できる。
 矛盾と誤解に満ちた食情報に流される無知な人々の、健康意識が浮き彫りになってくる。正確な数字は不明だが、大方の消費者はこの迷宮にはまり込んでいるとみていいだろう。
 この現象は「フードフェディズム(健康食かぶれ)」と呼ばれている。これらの大方は、「これさえ食べれば健康問題はすべて解消できる」といった“マジックフーズ”探しに躍起になる一方、BSEや残留農薬のように、自らの健康を脅かす“悪魔フーズ”の情報にも過敏なのが特徴である。
 だから寒天がダイエットに効く、となれば、店頭からあっという間に売れ切れを起こす。良いと聞けば合成添加物の錠剤のサプリメントに手を出す。
 これを助長しているのが一部の企業とメディアだ。この消費者の無知をうまく利用して、企業やメディアは特段の価値のないものを価値あるように宣伝し、煽り、店頭に商品を並べて売り抜ける。この手法を「悪のマーケティング」という。最近では捏造問題で、一部のテレビ番組が社会の批判を浴び撤退した。

 もちろん企業やメディアを、一方的に攻撃するのはナンセンスだ。それよりも情報に踊らされている我ら自身の無知を嘆くべきだ。最近ではセンセーショナルな語句を操るのに、非常に慎重な企業やメディアが増えている。死活問題に関わるからだ。
 それでも薬事法ぎりぎりの表現コピーで、一発を狙う商品も相変わらず多い。それに騙されない賢明な消費者こそが、実は質の高い健康情報の提供を促す唯一の方法となる。もちろん難しい問題が横たわっていることには違いない。
 さらに健康志向の消費者は3種類に分類される。

①売る為の情報に惑わされずに、「普通にバランスよく食べること」を地味に実践している人々
②フードフェディズムに陥っている似非健康志向の人々
③健康志向には無頓着な人々

この割合は残念ながら2:6:2くらいが現実の数字ではないかと思われる。
 もちろん常識人としては①を目指すべきだ。一見地味だし、面倒くさいし、他人事のようにみえるが、実は一番関心を持ちたい教養なのである。特にフードフェディズムに陥っている多くの人々に呼びかけたい。

<考察>
 我らはとりあえず、「甘い言葉や誘い」には、懐疑の目を向けよう。「癌に効く」「病気を防ぐ」「危ない」などの語彙には初めから疑ってかかろう。さらにその情報が誰を利するかを考えれば、自ずから情報の真偽の見当がつくはずである。
 矛盾や誤解に満ちた健康情報に溺れ、食と健康の本来の姿を見失った我ら日本人。魑魅魍魎とした食環境の中で、我らは自分なりの健康意識とその処方箋を描く力を身に付けるしか、自分とその家族を守る術はないのである。

1-3、間違いだらけの「食のリスク」

食のリスクに関しては「矛盾と誤解」が横行している。安全と危険、国産と外国産、天然と人工、善と悪など食をめぐる議論は、単純な2元論で語られがちだからである。
農薬や化学肥料は悪、遺伝子組替えは悪、食品添加物は危険、天然や自然は善、国内産ならば安全などと物事を多面に見るより、自分の都合のよい理論、情報のみに寄りかかり、それを判断の基準にしているのが現実の姿である。
さらに一度染み付いたこれらの情報は、なかなか払拭できない。「食のリスク」誤解から生じる「2次的リスク」が世間を覆っているのだ。 しかも食卓の外部依存が進む大きな変化のなかで、食をめぐる議論やチェックする真摯な意識も、どこか自分を別の場所に置いた傍観的な無責任な立場で、漠然として見ている。まるで他人事の「食のリスク」感である。
我らはよく「消費者は生産者の顔が見える関係を求めている。それが安全を確保する最強の方法だ」などと、知ったかぶりして言葉にしているが、はたしてそうだろうか。
対面販売の八百屋や魚屋での購入を排除し、気楽で便利なスーパーやコンビ二での消費に走ったのは消費者自身だ。いわば無機的な関係を選び、結果的に安全・安心という消費者側のリアルなチェック機能を投げ出したことになる。
そして自分ではどうにもならない「食のリスク」に過敏になり、単純な2元論に帰趨する矛盾を繰り返す。

 人間は大地から離れると根底から不安に陥るとは、民族学者柳田國男の言だが、たしかに我らが「食のリスク」に怯えるのは、食の実効支配を手から遠ざけた結果だとみて間違いない。郷土料理やおふくろ味にはその土着の匂いがあるから、多くの人々の心を捉えているのであろう。
 もう一度確認しておこう。我らの周りにある食が、すべて100%安全であるということはありえない。そのような現実の中に、我らの「食と健康」という課題とジレンマが常にあることを認識しておくべきだ。
 またそれを可能にする強かな教養と情報を身につけるしか、われらは自身や家族を守れないのである。「間違いだらけの食のリスク」は「無関心な食の教養」から起こるのだと、今一度、我らの足許を見つめなおすべきなのであろう。

<考察>
 食のリスクは科学的な見地と情緒的な納得性から、冷静に判断すべきである。善と悪、危険と安全などの2元論で言い切れるほど単純ではない。まずは日本の食卓事情、食資源事情の事実を知ることが肝要である。
 食育基本法は、子どもたちにも日本の食の現状を教えようとしている。軽はずみな「食のリスク」の知識を身に付けさせないための施策とも言える。
 とくに残留農薬規制、遺伝子組換え、有機栽培、BSE牛肉、養殖魚、似非健康食品などは、食のリスクとして、たしかな知見を我らは持つべきだ。ただ単に騒ぎ立てても、供給者側と需要者側の信頼の距離は埋まらないことを理解すべきだ。

2 スローでウオッチング(3)

  1. 万年筆を持つ人を時おりみかける。しかもデキル人が多い。
    パソコンの時代には不要の長物だが、それはファストなモノの考え方。モンブラン、パーカーなど身銭を切った名品の1本を手にすれば、作家でなくとも何となく心が華やぐものだ。 さらにその万年筆で紙に夢を書き出すといい。不思議にその文字は夢をかなえる形を見せてくれる。若者よ、万年筆を胸にさして、街にでよう。
  2. バイオガソリンが食料資源を食い荒らす懸念が広まっている。
    すでに一部の食品が値上げに踏み切った。しかしもっと厄介なのは森林伐採の破壊に繋がることだ。
    CO2排出を防ぐガソリンをつくるため、自然を壊すという矛盾が起こっている。人類は地球資源をギリギリの状態で使用している。
  3. 小千谷が公募したクラインガルテン(滞在型市民農園)がキャンセル待ちの人気だ。年間約40万円で、最長5年まで借りられる。そのまま小千谷に移住してくれれば、という過疎対策だが、この動きは日本全土に広がる気配だ。
    ちなみに安塚、津南、高柳、妙高などでは、300万円から600万円規模の空家がゴロゴロと買い手を待つ状態だ。捨てる神あれば拾う神あり。老後の田舎暮らしは容易ではないが、一縷の光りを見せかけている。
  4. 佐渡の夕焼けは圧巻だ。新潟すべてのビルのガラスが、真っ赤に染まるくらいに燃え立つ。夕焼けコンサートなども浜辺の会場で行われる。
    ちなみにこの夕焼けは夏の季語である。夏の夕焼けが一番盛りだからだろう。特に梅雨の晴れ間の夕焼けは美しい。
    この夕焼けに手を合わせて、拝んでいるおばちゃんをみかける。佐渡の夕焼の果てに、かの西方浄土が透けてみえるのかもしれない。そういえばそんな気がする。