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2007年08月01日 21:30

VOL 3

ママたちの食育概論(その1)

 新潟から立ち上がった「ママたちの手づくり食育学会」の論点と成果を、月次にわたりレポートいたします。
スローフード視点での具体的、体験的な発表となります。
 まずスローフード運動としての食育についてです。

1、スローフードな食育はこうつくる

 スローフード運動に欠かせないのが「食育」への取り組みです。味覚教育を中心に専門的なカリキュラムも用意されています。しかし世間一般の食育活動と、どこが違うのかは、まだ漠然としています。その辺を踏まえながら、食育のあり方と成果について考えて参ります。まず世間一般の食育活動の現状をみてみます。
 食育は、学校の「育」と呼ばれる「体育、知育、徳育」に続く教育体系のひとつです。最近注目されだした考えかたです。
 さらに2005年7月15日に食育基本法という法律ができました。これには、この法律の目指すこと(理念)と、国や地方自治体や教育関係者、国民が努めるべきこと(責務)が書いてあります。この法律を受けて都道府県や市町村では「食育推進会議」をつくり、「食育推進計画」をつくり推進に努めています。

 具体的に、私たちの身の回りでは、今後こんなことが起こります。

  1. 学校給食に地元の食材が多く使われるようになり、郷 土料理が増える
  2. 栄養士やシェフが学校の授業で食について話をしたり、農家が農作物の栽培体験を指導する機会がふえる
  3. 医療機関、保健所、食品関係事業者などからの、「病気を防ぐための食事」に関する情報がふえ、勉強会もふえる
  4. 市町村主催の親子料理教室や、妊産婦、高齢者などを対象とした栄養指導がふえる
  5. 食事バランスガイド、食生活指針など、体によい食事についての案内をスーパーやコンビニで見かけることがふえる
  6. 食事のマナー(箸の持ち方、挨拶の仕方)など、基本動作を教える機会がふえる
  7. 地産地消運動の意識が高まり、食糧自給率などにも関心が高まる

など、様々な動きが出ています。
ここでもう一度「食育」の定義をおさらいしておきます。
食育とは

  1. 食の安全性や食文化、食事作法など、(食)に関する正しい知識を身につけさせさせることで、健康な食生活が送れるように促す取り組み。
  2. 多様な味覚の正しい認識、農業・食料問題への理解などの幅広い概念である。

さらにこの定義は、以下の「6つの学習」にまとめることができます。

①「素材」の背景を伝えること
②「親」と「子」が一緒に考えること
③「火」や「道具」の使い方を知ること
④ 五感で感受できる「味覚」を育てること
⑤ 楽しむ「場」をつくること
⑥ 食べる「礼儀作法」を伝えること

「なんだ、食育って、当たり前のことをやるだけじゃないの」と総論では、誰でもが納得することばかりです。
もちろんその通りです。何も難しいことをやろうということではありません。「米粒は一粒も残すな」、「お百姓さんの汗に感謝しろ」、「食事中はテレビや新聞を読むな」、「箸は正しく持て」、そして「この事を自分の子供に伝えろ」などは、我らの世代には、親から繰り返し言われたものです。

 しかし最近、あたかも降って湧いたような「食育、ショクイク」の大合唱が起こっています。何かとてつもなく大切な「魔法の杖」を探し始めた感じがします。食育で一体何を取り戻そうとしているのでしょうか。ここらで冷静になってその道を探らねばなりません。
 また食育の具体的な方法論には、様々な考え方があり、アプローチの手法も千差万別です。そのやり方の差異は、立場や担当分野、専門の違いからきています。
一般的には

  1. 栄養学的見地からのアプローチ(栄養士、厚生省)
  2. 自給率の見地からのアプローチ(JA 、農水省)
  3. 医学的な見地からのアプローチ(医療機関、厚生省)
  4. 食文化的な見地からのアプローチ(スローフード、文化庁)
  5. 調理技術や献立的な見地からのアプローチ(料理人、料理学校)
  6. 自社商品をアピールする立場からのアプローチ(スナックメーカー、マクドナルドなどの食品企業)

などがそれぞれの立場での食育理論を実践に生かそうとしています。
 もちろんスローフード協会が行う食育は、本物の食材の味覚を覚え、食の多様性と快楽をインプットすることが主眼になり、他とは一線を画すことが求められています。
 よく食育とは「お皿の上の料理と、お皿の外の事柄を理解するようなプログラムである」と言われていますが、それを学び、理解し、自分の力となるまでに筋肉をつけるには、相当の時間とエネルギーが必要です。1回、2回の食育講座では砂漠に水を打つ様なものです。この辺が食育の難しさとそのゆくえを阻んでいるのです。
 しかし、とりあえず与えられた立場から、得意なやり方で取り組みを開始している。「ママたちの食育学会」も、子ども達や大人を対象にする具体的な食育のつくり方に着手しています。そのやり方は以下の手順にしたがいます。
 食育体系を複雑にしないために、あえて食育を基礎編と応用編に分けて、まず基礎編からのワークショップを実践します。さらに基礎編がマスターできた時点から徐々に、応用編の教養を学ぶことにしています。
 こうすることにより、様々な選択肢を用意することができます。押し付けの弊害も最小限に押さえることができます。
その全体のプログラムは以下の通りです。

「基本の食」講座(基礎編)※まずこの講座から始めよう
(ご飯+味噌汁+おひたし+焼き魚)の技と知識をマスターする講座
赤文字:スローフード運動の関心領域

まずは基礎編の「基本の食」のマスターからすべての食育活動は始まります。
 ご飯、みそ汁、おひたし、焼き魚の4点メニューを完全にマスターすることが基礎です。この点がきわめて重要です。食育の応用編(教養編)は、その後からでも十分に配慮できます。この手順ですっきりした食育体系のプログラムが俯瞰できます。
 いいたい人が言いたい事をいい、やりたい人がやりたいことをやります。子どもがそこでどう変わったかは、誰も気にしません。「やれど 学ばず」の食育を何度繰り返しても、子どもの食は変わらないし、生きのびる技も知識も身につきません。これらの反省を踏まえての食育実践法が、これですっきり整備されることになります。
 この基礎編を踏まえるやり方は、様々な立場を越えて、まず取り組むべき重要な実践課題です。日本人としての食性を身体に染みこませるための具体策ともいえます。
 その実践プログラムの代表が、長崎大学大学院の中村修先生の「食育実践プログラム」です。7つの技と考え方を押さえる手法がそれです。
 食育のプロだと、名乗りを挙げている各界の有象無象の食の伝道士界の中でも、ひときわ注目と信頼のおける手法です。私たちの「ママたちの食育学会」はこの手法に学び、食育体系を整えようとしています。

2、「基本の食・4品」はこうつくる(基礎編)

中村プログラムの流れは次の通りです。

  1. 宿題として、3日間の食事を携帯のカメラで写す →まず現状を把握します。金土日の3日間がよい。以下の写真の大学生のファストフーズだけの悲惨な食事事情を、子どもたちにみせて感想を聞きます。
  2. 基本の食とその意味、調理法を学びます
    →基本の食=「ご飯+具入り味噌汁+おひたし又は漬物+焼き魚」
    イメージ的には旅館の朝食を思い浮かべるメニューです。
    子どもたちが宿題として、家庭で3回つくります。
    上の写真がその「基本の食・4品」といわれるメニューです。ダシ、味噌と醤油の味、季節の野菜、低脂肪の魚、ご飯などで構成される理想的な和食です。
  3. 生活習慣病についてデータではなく、糖尿病患者の手記を使って、病気の実態を学びます
    →60%の人々が生活習病で死ぬことを教えます。
  4. テレビコマーシャルに左右されている食の現状を理解させます
    →自分にとって本当に必要な商品なのかを判別できる力を養います。正しくて良質なコマーシャルの選び方を教えます。
  5. 買物の技として、表示や産地を見て買う技術を学びます
    →成分表示、とくに砂糖、油、塩の多少を読み取る方法を教える。
  6. ウンコによって体調と食の関係を理解させます
    →毎日、身近で確かな食のバランスを判定する方法を教えます。
  7. 以上の知識と技で3日間の食事調査に挑み、それを点数として評価します
    →技と知識がしっかり身に付いたかをテストで確認します。やりっ放しの食育から決別します。

教えるべき技術と考え方は、これだけです。
 この簡単なプログラムを学ぶことで、確実に「結果」がでます。食育の第一義である「生活習慣病の予防」効果に貢献でき、このプログラムは小学生から大学生、社会人にまで応用できます。まずは「基本の食」を家族と一緒に、家庭で宿題として3回作らせます。これだけで自転車に乗る技と同じで、子どもの一生の技となります。
 さらに「基本の食」の野菜は地元の直売所から買ったもので、魚も米も味噌も地元のものを使えば、「地産地消」という応用はすぐに実践できることになります。
 実学の食育とはこんな活動をいうのです。しかも子どもたちが、怠慢な親たちを逆教育することにもなり、親たちもうかうかしておれなくなります。

 またこのプログラムは具体的には、カップ麺やコンビ二の弁当を食べる人を「基本食」に誘導することを目標にしています。親もとから離れて暮らす子どもたちが、寄る辺とする最強の食の教養だからです。
 その効果はウンコ(排便)にすぐ現れます。この押さえがすばらしいのです。何も考えずに、いわれた通りに基本食をベースにした食に変えたところ、3日目にはなんと柔らかくて黄色くて、臭くないウンコが出てきます。この話をしたら、小学生には大うけでした。彼らは冷静な目で、食育の本質を見抜いているのです。
 念のために、うんこ博士の判断表を示しておきます。

<うんこ博士の判断表>

黄色のバナナうんこ 健康的なうんこ。100g程度のものが2~3本が理想。野菜を中心にした食生活を送っている。
黄色のぐるぐるうんこ 最高のうんこ。分量は400g程度。健康的な食生活の証しで、体力があり、病気にかかりにくい。
黒褐色のカチカチうんこ 便秘後のうんこで、切れ痔の原因となる。野菜が少なく、肉中心の食事が原因。動脈硬化、心筋梗塞、大腸がんなどになりやすい。ご飯と野菜を増やし、お菓子などの甘いものを避け、お茶などを多く取ると改善される。
黒褐色のコロコロうんこ コンビ二食、ファストフードなどの食事中心が原因。糖尿病や高脂血症になる危険性が高くなる。甘いものを避け、調理野菜や海藻類を食べると改善される。
黒色のドロドロうんこ 最悪のうんこ。お菓子ばかり食べ、食事をきちんと取っていないときのうんこ。あらゆる病気になりやすい。 ご飯、味噌汁、焼き魚、おしたしの基本の食をとれば改善される。

 事実、肌荒れや便秘、疲労感で悩んでいた人々の多くがこの基本食を取ることで改善され、救われて感謝しています。都会に住むキャリアーウーマンたちもこの基本食に大いに救われていると聞きます。
 このうんこ博士の話しは、小学生には抜群の人気であり、即、実効性がある優れた教育となります。汚いと思うのは、大人たちの偏見です

 ただし基本の食だけでは、私たちの食に対する欲望は満足させることはできません。たまには脂がしたたる肉も食べ、こってりとしたスイートも楽しみたいものです。身体に良いからと言って、朝から晩まで基本食とそのバリエーションで過ごすのは現実的ではありません。この問いに関する答えとして、新潟大学のお医者さまの言があります。
 「週のうち7割くらいは基本の食を取る。あとの3割は、好きなように、好きなものを食べて無茶苦茶すればいいでしょう。そして朝、トイレでウンコを確認して、反省すればいいのです。その繰り返し、繰り返しが人生というものでしょう」と、禅問答さながらのアドバイスです。納得しました。
 この「食と健康と快楽」のバランス感覚を見極める力を持つことこそ、実は食育の究極の到達点だと考えられます。
 さて次回は食育の応用編について話しをすすめる予定です。立場の違う様々な人々が腕を振るう食育論の出番となります。



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電話:025-228-9462