新着トピックス


カテゴリー


バックナンバー


2007年08月01日 21:25

VOL 2

手前味噌を仕込む人々

 新潟には風土に生きた様々な零細な味噌屋がある。大手メーカーのファストな味噌とは一線を画し、細々と天然醸造に生きる家族経営の味噌屋だ。
 その中のひとつの、村上市の奈良橋醸造(社長・奈良橋常久氏)にて、恒例の味噌の「花見仕込み」会が開かれた。すでに今回で4回目を迎える人気ワークショップである。
 参加者は「SF・にいがた」のメンバーの18名である。夫婦での参加も2組ほどあり、意外な盛り上がりをみせている。
 まず古家の味噌蔵会場で奈良橋さんの「味噌講座」から始まる。メモをとる人、デジタルカメラを構える人など、まるで小学生の家庭科の時間のように真剣な18名だ。
 今日の仕込み材料は

1、大豆:岩船郡朝日村岩沢産のアヤコガネ
2、米:村上周辺のコシヒカリ
3、塩:山北町の日本海企画産の天然塩
4、水:荒川系の浄水道の水

 と、すべて村上地区の地産地消を地でいくこだわりである。
 味噌講座の後は、いよいよ特製のエプロンをして、湯気立ちのぼる工場に入る。まずは地獄釜と言われる大きな釜を囲む。すでに大豆(アヤコガネ)が茹でられて、湯気を立てて、甘い香りが漂っている。
 それを手にとりほお張ると、なんとも言えない甘さと匂いが鼻を抜ける。まさに大豆の味である。「あっちちち!」などと言いながら、釜揚げの大豆に群がる参加者の顔は、好奇心に満ちている。
 その豆を湯切りして、ミキサーで潰す。大豆のミンチを作るわけだ。ベテランの工場のおばちゃんが手際よく、やってくれます。

 さていよいよ、手前味噌の仕込みの作業が始まる。
仕込みの割合は

○ 処理大豆―2,7kg
○ 糀―1,78kg
○ 塩―660g
○ 種水―0.,3kg
○ 種味噌―0.,4kg

以上の仕込みで、約5kg(塩分は12,1%)になるのだ。
 まずは奈良橋醸造さん特製の「へぎ糀」(木枠でコシヒカリに糀を仕込んだモノ)を解す作業を行う。真白なへぎ糀は結構堅く、皆さんは土間にしゃがみこんで、真剣そのものだ。
 次は解した麹を計量してポリ樽に入れ、それに先ほどミキサーされた大豆を加えて、塩と種水を載せて、あとは両手で粘土細工のように、こね回したり叩いたりしながら均一に均す。
 こうなると、誰もが無口になり、ただひたすら手前味噌の神聖な世界に没頭する。最後は「宜しく頼むぞ!」と酵母に声をかけながら入れて、かき混ぜてポリ袋に入れ、空気を抜いて名札を付けた樽に密封して終わりとなる。所要時間は約40分だ。
 この仕込み味噌は、夏場(気温30度、10~15日間)を経ることにより、くつくつと醗酵して、11月には熟成を終え、皆さんの手元に届けられる。奈良橋さんによると、蔵には蔵の特有な菌がおり、それによって様々な風味の味噌が出来上がるとのこと。
 これを「蔵癖」という。しかもその蔵癖を勝手に自慢することを、「手前味噌」と言うのだそうだ。味噌には甘口と辛口があるが、村上の味噌は辛口の部類に入る。奈良橋醸造さんの蔵癖は、さて、どんな変化球を見せてくれるのだろうか。

 最後は奈良橋さんもてなしの、おむすびとみそ汁をいただき、全員で記念写真を撮り、満ち足りた村上の「ワークショップ」を後にした。
 零細の味噌メーカーが毎年開催する手前味噌体験は、ゆっくりと愛好家を増やし、各地からも注文が舞い込むほどの人気となっている。もちろん自分で仕込んだ味噌は、最高に旨い。今まで市販の味噌を食べていたことが、大いに悔やまれる。友人に一度贈ると、必ず毎年オファーがくるとは、参加者全員の素朴な声である。
 このような味噌つくりを「負けない競争」という。地域ブランド開発の基本となる競争原理と言えそうである。この味噌が醗酵を終える頃、村上には鮭の大群と供に、」厳しい冬将軍がやってくる。今日はこの味噌で土手鍋をつくり、地酒で一献やることにしよう。